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    労働時評/産別で賃上げに明暗/低ベア・分散化が課題

     2017春闘で連合は初めて経済指標よりも賃上げを優先する「社会的役割春闘」を展開し、4年連続でベアを獲得した。しかし水準は低く、輸出関連は前年比マイナス、内需関連は同プラスと、産業別で明暗に分かれた。「働き方改革」では多様な回答とベアの分散化も見られる。

     

    ●社会的役割春闘で一致

     

     連合は春闘62年の歴史でも初めて新たな要求スタンスとして、物価上昇率や経済成長が十分でなくても、日本経済の自律的成長や人材確保に向け賃上げを優先する春闘を展開した。「社会的役割春闘」といわれる。

     序盤の回答は、トランプ米大統領の保護主義など不透明な内外情勢の中、自動車、電機など大手は15年ぶりの4年連続ベアを獲得した。連合の神津里季生会長は、新たな観点の要求方式について「社会的な認識も一定共有され、来春闘も継承」と展望している。

     経団連の榊原定征会長も経済好循環実現の「社会的要請」を踏まえ、回答結果について「ベアゼロの流れを断ち切り、継続賃上げへの理解と評価を求めたい」との見解を発表した。

     国際通貨基金(IMF)が昨年、日本に3%の賃上げを提言。家計所得増で経済成長を図る「逆所得政策」の提言も学識者から出され、賃上げを求める世論は高まっていた。

     問題はベアの継続が重視され、ベア水準の論議が軽視されたことである。

     

    ●問われる水準と分配

     

     賃上げ水準は自動車、電機など輸出関連は昨年比マイナスとなり、UAゼンセンなど内需関連は同プラスとなっている。

     連合の賃上げ集計は3月23日段階で昨年マイナス111円の6224円(2・05%)、ベアは1294円(0・42%)。春闘に影響を与えるトヨタは基準内賃金が昨年より4150円低下し、ベアは昨年より200円マイナスの1300円(0・37%)にとどまった。 低いベア水準は個人消費拡大や経済への効果も疑問視されている。将来不安の解消を含め、水準の引き上げが重要課題だ。

     支払い能力は十分ある。大企業の内部留保は昨年から増え、318兆円に達した。トヨタでは19兆8889億円にも上る。神津会長は「内部留保はたまりにたまっており、配分の問題が問われている」と指摘している。

     

    ●内需、中小ではプラス

     

     内需関連や中小労組の多い産別は、人手不足の解消と格差是正を掲げ善戦している。

     UAゼンセンは3月23日現在、昨年プラス173円の6568円を確保。昨年と比較できる99組合のベア平均は1533円(0・54%)で、同132円上回る。パート組合員では、正社員の賃上げ率2・24%を上回る2・53%と健闘している。「春闘は金属の回答だけではない」と、今春闘で初めて金属労協との同日記者会見を開催。「やる気」をアピールした。

     フード連合は好調な業績や人手不足を反映し、味の素がベア1万円(定昇7823円とは別)を獲得し、36組合のベア平均は1884円。マスコミが報じた「金属大手回答」とは異なる動きを評価し、産別や親会社労組などが中小支援を強めている。

     内需関連や中小は連合の2%要求基準を守った。自動車、電機などの1%とは違って、「大手追従・大手準拠からの脱却」をめざし共闘体制を強めているのが特徴だ。

     

    ●働き方で多様な回答

     

     もう一つの大きな特徴は、働き方改革関連で多様な回答を引き出したことと、ベアの分散化がみられたことである。

     トヨタは第2子以降の子ども手当を2万円に引き上げた。一人平均原資は1100円で「ワンショット・ベア」とも。他産別でも若年層への配分が見られる。

     経団連は春闘の大きな特徴として、働き方改革をめぐる多様な回答を挙げた。注意すべきは、総額人件費内で子育て世代、若年など6種類を挙げ、ベアの配分を提起するなど、ベア抑制と分散化を狙っていることである。

     連合は、ベアと手当を区別するとともに、全員の賃金を引き上げるベアと、働き方改革への組合員のニーズにこだわる交渉を提起。非正規労働者の均等待遇や、ワークルールの改善など約30項目を設定した。電機連合は有期雇用労働者4万数千人の無期転換をめざし、UAゼンセンは勤務間インターバル制度(休息時間)の新設・拡大を追求。NTTは正社員と契約社員に同一の食事手当3500円を新設した。

     なお連合春闘で2年目を迎えた付加価値の適正還元や公正取引の課題は、自動車労使やJAMなどで前進しているのが注目される。

     

    ●全労連はストで健闘

     

     全労連は生計費原則に基づく大幅賃上げと労働法制改悪、戦争法・改憲阻止でストライキ闘争を展開。ヤマ場の3月16日には医労連が4万円以上を掲げ78組合のストを含む310組合が決起したほか、JMITU、建交労、福祉保育労など昨年を上回る19産別47地方がストを含む官民全国闘争を展開し20万人が参加した。自治労連も3万人規模で初の早朝職場集会などを展開した。

     賃上げ水準は3月24日、昨年プラス715円の5929円と健闘している。

     全労連、全労協、平和フォーラムなど「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が初めて「格差・貧困ノー」を掲げる集会を2月に東京で開き4千人が参加。戦争法廃止と格差是正を結び毎月19日の行動を展開する、安倍暴走政治阻止の運動の広がりが注目される。(ジャーナリスト 鹿田勝一)