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    人間らしい働き方実現へ/連合総研がフォーラム

     連合のシンクタンクである連合総研は10月24日、都内で「人間らしい働き方の実現」をテーマに、来年の春季生活闘争やワーク・ライフ・バランスの実現を話し合うパネル討論を行った。出席した識者らが賃上げの必要性を強調するとともに、労働者が人間らしい生活を確保する「時間主権」の確立を訴えた。

     古賀伸明理事長は「人手不足感が高まっているのに実質賃金は低い伸びにとどまっている。賃上げで適正な分配を実現し、暮らしの底上げを図るべき。非正規労働の見直しや時間主権の確立など、より構造的な問題に取り組まなければならない」とあいさつ。

     中城吉郎所長は日本経済の現状について、「緩やかな回復過程」にあり、世界経済も輸出を下支えに「堅調な回復基調にある」と指摘する一方、労働分配率は低下傾向で、家計消費は伸び悩んでいると分析。「企業は最高益を上げ、消費者物価も上昇している。来年は実質賃金の向上、消費拡大の重要な局面に入ってきた」と賃上げの意義を語った。

     パネル討論では、日本総研の山田久主席研究員、吉川洋東京大学名誉教授が、1990年代以降、名目賃金が先進国で唯一低下し続けてきた日本経済の「異常さ」を指摘。労働者のモチベーション向上、生産性向上のインセンティブを刺激する上でも賃上げが求められるとし、「企業にとってこそ賃上げが必要」(山田氏)との持論が語られた。企業が多額の内部留保を積み上げていることへの批判(吉川氏)も出された。

     

    ●「時間主権」の追求も

     

     パネル討論では、家庭生活や社会生活に費やす「生活時間」に焦点が当てられた。労働時間や睡眠時間とは別の、生活を豊かにするための時間である。

     中城所長は、社会生活に関わる時間が2001年からの10年間で減少していることや、男性の家庭生活時間が女性と比べて著しく短いことを示した国の統計を紹介。東レ経営研究所の渥美由喜主任研究員は、生活時間が充実している人ほど、消費者の視点で商品やサービスの開発に携わることができ、業務の効率化も習慣づくという事業上の利点を挙げ、「労働時間の把握は今後ますます重要になる」と指摘した。

     その上で、政府が進める高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の適用拡大について、渥美氏は「(ワーク・ライフ・バランスに)逆行する動きだ」と批判。「成果に応じた報酬」と政府は言うが、成果を上げても、目標の吊り上げや評価方法の変更で際限のない労働強化を強いられる危険性を指摘し、「防波堤」としての労働運動の役割に期待を述べた。