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    不払い残業代を求め提訴/羽田空港のハイヤー労働者/違法な変形労働制で被害

     羽田空港で主に全日空の操縦士や客室乗務員らの送迎を行うハイヤー会社、イースタンエアポートモータースに勤務する社員3人が未払い残業代約800万円の支払いを求めて4月12日、東京地裁に提訴した。原告はプレカリアートユニオンの組合員。

     提訴した社員は12時間勤務の2交代制で配車業務を担当し、日勤・夜勤・夜勤明け・休日の4日ローテーションを基本に1カ月単位でシフトが組まれている。

     会社は変形労働時間制を適用していると説明していたが、団体交渉で就業規則の開示を求めたところ、当該事業所の就業規則を作成していなかったことが発覚。会社は変形労働時間制が無効だと認めた。

     組合が実労働時間に基づいて未払い残業代を請求すると、会社は減額した額を提示。その算出根拠を明かさなかったため、提訴に踏み切った。同ユニオンによると、会社には新しい組合が結成され、新たな就業規則作成に合意する動きがあるという。

     原告の渡辺麻人さんは「今のシフトは時差ぼけのように体にこたえる。10時から翌朝7時半までの21時間勤務を組まれた時に激しい目まいに襲われ、体調を崩した。労働環境を改善したい」と語った。

     代理人の大久保修一弁護士は「変形労働時間制の大前提であるシフトが固定されず、運用実態も整っていない。労働時間が週平均40時間に収まればよいということではない。健康問題に直結する」と批判した。

     

    〈用語解説〉

     

     変形労働時間制 1日8時間、週40時間の労働時間規制を弾力化する制度。1カ月単位の場合、就業規則に定めれば導入が可能で、8時間労働を超える日があっても、平均週40時間以内なら違法にならない。