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    危険な内容、浮き彫りに/高プロ制の国会審議/課題残したまま強行採決か

     働き方改革関連法案の実質審議が始まった。与党は今月中にも衆院での採決を強行する構えとみられる。5月9日、11日の厚生労働委員会審議では「高度プロフェッショナル制度」の危険な内容が改めて浮き彫りとなった。

     

    ●長時間労働は自己責任

     

     「長時間労働を抑制できるのか」との西村智奈美議員(立憲民主)の質問に対し、加藤勝信厚生労働大臣は「(当事者)ご自身が判断して答えを出していく」と述べた。長時間労働は自己責任ということ。

     併せて大臣は「健康確保措置を盛り込んでいる」と弁明した。同措置は、年104日以上の休日を義務付けた上で(1)勤務間インターバル(2)労働時間の上限設定(3)残業が一定時間超えた人への健康診断――などから一つを選択する仕組み。このうち(3)の健康診断を選べば、長時間労働抑制の保障はほとんどなくなる。

     

    ●「人が死ぬ制度」

     

     法案は、例えば5日間連続24時間労働を命じても違法ではない。この点を指摘した大西健介議員(国民民主)に対し、加藤大臣は「理論上で言えばいろんなことが想定されるわけだが、そういう形は論外」と、歯止めがないことを事実上認めた。

     大西議員は「机上では可能でも、現実には起こりえない。そんなことをしたら死ぬからだ。死ぬことが起こり得る制度を作ることになる」と批判した。働き手を使い捨てにする「ブラック企業」が、野放しになる事態が懸念される。

     

    ●裁量がない!

     

     法案は、現行の裁量労働制と違って、出退勤や時間配分に関する裁量が明記されていない。朝から深夜まで働かせることも可能と指摘される。裁量について、大臣は「働く時間帯や時間配分を自ら決定していく。省令で明確に書かせていただく」。制度の肝の部分を法制化せず、省令で済ませていいものだろうか。

     

    ●ヒアリング「十数人」

     

     何より仰天させられたのがこの答弁。制度のニーズを問う岡本あき子議員(立憲民主)の質問に、大臣は「十数名からヒアリングした」と述べ、制度創設が求められていたと答えた。

     岡本議員は「国民をばかにしているのではないか」「10人なんかで7千万労働者の判断をしていいのか」と怒りを爆発させた。

     

    ●深夜割増省きたいだけ

     

     同じく制度のニーズを問う高橋千鶴子議員(共産)に対し、加藤大臣は自由に時間を使うことで創造的な仕事ができるようになるとし、「夜間の賃金が高くなればその時間は(働くのを)やめてくれとなるわけだけれども、夜間働いた方が効率が高い人もいる」と述べた。現行法でも夜間に働くことは可能。高プロ制にすれば深夜割増手当を支払わずに済む。高橋議員は使用者が得をするだけの制度と批判した。

     

    ●小さく生んで大きく…

     

     塩崎恭久前厚労大臣は2015年春、経営者の会合で「(高プロ制を)小さく生んで大きく育てる」と理解を求め、物議を醸した。山井和則議員(国民民主)は年収要件の「年間平均給与の3倍(1075万円)」を引き下げる可能性を問うたところ、大臣は「10年先、20年先、30年先を言われても答弁できない」。大臣は将来の引き下げを決して否定しない。導入の狙いが透けて見える。

     

    ●行政のさじ加減次第

     

     高プロ制適用の業務要件は「働いた時間とそれで得た成果との関連が高くない業務」。研究開発職やアナリストなどを例示しているが、具体的には法制定後に省令で定める。省令改正に法改正は不要。対象拡大は行政のさじ加減次第だ。