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    「長時間労働への歯止めなくす」/高プロ制めぐり金属労協が論文/ものづくり現場の視点で批判

     金属労協は理論誌「JCM」(2018年春号)で「高度プロフェッショナル制度、なぜ必要ないのか」という論文(浅井茂利政策企画局主査執筆)を掲載している。ものづくり現場の視点から政府の主張を批判し、長時間労働に歯止めがかからなくなると警告している。

     浅井氏は高プロ制について、11年前に「残業代ゼロ法案」と批判されて廃案になったホワイトカラーエグゼンプションの焼き直しだとし、「脱時間給」「時間ではなく成果で評価される働き方」と言い換える主張には、「無理が生じている」と指摘する。

     高プロ制適用の年収要件についても、1千万円以上あるから交渉力が高いとなぜ判断できるのか「全く意味不明」と批判。「ノーベル賞確実といわれ、実際にその後受賞したような社員でも充分に処遇されない場合もあるのですから、『余人を持って代えがたい人』であったとしても、必ずしも交渉力が高いとはいえない」と断じた。

     成果が同じなのに長く残業した方が収入が多くなるのは不公平という主張には、「そのような場合には人事考課によって、基本賃金や一時金でバランスを是正するのが筋」と反論している。

     高プロ制が一部に支持される背景には「クリエーティブ(創造的)な仕事は才能やひらめきが重要で、労働時間(の長さ)は関係ないとの思い込みがあるのではないか」と分析。

     「クリエーティブな仕事では作業量を増やしても必ずしも成果には結びつきませんが、(一定の)作業なしに成果を出せる人はいません。アウトプット(成果)を増やそうと思えば作業量を増やさざるを得ません」とし、長時間労働に歯止めがかからなくなると警告している。