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    〈強まる経産省主導行政〉上/農業は「もうけ」の対象なのか/種子法廃止で高まる不安

     安倍政権下では、経済産業省が首相官邸と連携して他省庁の政策に口を出す場面が増えている。国民の暮らしや権利に関わる分野についても企業の「もうけ」の対象にしようという姿勢が目立ってきた。

     

     「農水省は経産省に乗っ取られたも同然」

     ある農業団体の役員は怒りを込めてこう訴える。環太平洋経済連携協定(TPP)による農産物の輸入拡大や輸出促進、農地の大規模化、農協改革など一連の「安倍農政」の背景には、経済界とその意を受けた経済産業省の動きがあるという指摘である。

     昨年4月、衆参合わせて12時間という短時間の審議で成立した種子法廃止法(今年4月施行)もその流れの一環だ。

     

    ●「知見」を民間に提供

     

     種子法は、国が地方自治体に優良な種子の開発を義務付けた法律。都道府県の農業試験場で病害虫に強く栽培しやすい米を育成するなど、戦後の農業と国民の食生活を支えてきた。米だけでも300以上の品種を開発し、国内で自給してきた。それなのに、政府の規制改革推進会議の提言を受けて廃止法がスピード可決された。「民間企業の種子開発参入のため」が主な理由だった。

     昨年5月には農業競争力強化支援法も成立。都道府県などが持っている種子データなどの「知見」を民間企業に提供することが定められた。

     企業はこうした「知見」を活用して開発した種子について、特許を取って独占するのではないか、との懸念が強まっている。

     

    ●人事面でも布陣

     

     種子法廃止は、経済産業省が主導したという。そのための人事配置も行われていた。昨年4月時点で、種苗や農産物の輸出を担当する食料産業局長は経産省出身の井上宏司氏で、今も現職にある。農水大臣政務官を務めた細田健一氏と矢倉克夫氏も経産省出身の議員。ついでに言えば、昨年8月から農水大臣を務めている斉藤健氏も元経産官僚だ。

     安倍政権は、知的財産権を生かしたビジネス展開を掲げている。農水省の「知的財産戦略2020」も種苗産業の競争力強化をうたい、種子に関する知的財産権に注目している。

     

    ●独占進む世界の種子

     

     市民団体、日本の種子を守る会は「世界で流通している種子のほとんどが巨大多国籍企業の手によるもので、種子独占が進んでいる」と指摘する。独占した上で、化学メーカーなどが自由貿易協定などを使って各国に遺伝子組み換え種子の浸透を図ったり、農薬とセットでの普及を進めたりしているという。

     実際、インドでは2000年代初頭に遺伝子組み換え綿花が9割を占めるようになった。化学メーカーのモンサントが市場を独占した結果で、種子管理から販売まで契約で農民を縛り、毎年の種子購入を義務付けた。その結果、種子価格の高騰で農民が破綻し、自殺者が相次ぐ惨事を招いたといわれている。

     日本の農業は大丈夫なのか。守る会は、農業を企業の手に委ねてもうけの対象にすることの危険性を訴え続けている。