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    〈生涯ハケンへの『改正』から3年〉(3)/職場の声を踏まえ、常勤採用求める/堺市職員労働組合

     派遣労働の事業所単位の受け入れ上限が一律3年とされ、自治体職場でも対応が迫られる。大阪府堺市では、延長の是非を述べるために選出された過半数代表の職員が職場アンケートを行った。そこで示された声を踏まえ、「延長すべきでない」「(3年後の)再延長は認めない」との意見を部署ごとの実情に応じて示し、市当局に突きつけた。派遣先労組である堺市職労(自治労連加盟)が全面的に後押しした。

     

    ●職場の声に根ざして

     

     堺市は昨年末、派遣受け入れ延長について意見聴取をするための過半数代表の立候補者を募集した。

     派遣労働を3年を超えて利用するには、非正規職員を母数に含めた過半数労組の意見聴取が必要だ。該当する労組がなければ、過半数代表を選ばなければならない。これをせずに受け入れ続ければ期間制限違反となり、派遣先との雇用関係が成立したとみなされる。市当局としては避けられない措置だった。

     同市では、全職員の過半数代表を選出するのは初めてだという。

     今年1月、堺市職労の荻野豪書記次長が立候補し、投票で信任された。そこで取り組んだのが職場アンケートだ。派遣労働者本人と、受け入れている職場の課長、課長補佐、係長、係員らに質問表を届け、声を集める作業を始めた。

     荻野さんは「派遣の方々は多種多様な仕事に就いている。組合執行部と相談した結果、空中戦にせず『この職場の実態はこうだ』としっかり主張できるようにするため、職員の皆さんに率直な意見を求めた」と振り返る。

     過半数代表は労働者派遣法に基づき選出された、市の公的な役職。組合活動では使えない庁内の業務用LANを通じて各部署にアンケートへの協力を要請した。過半数代表から委任を受けた職員(市職労役員)がビラ配布や職場訪問などで周知活動を展開し、職員については58職場206人、派遣労働者では41職場104人から回答を得た。

     

    ●3年ごしの宿題を課す

     

     職員に聞いたのは次の3点。派遣労働者を受け入れている業務について(1)今後も継続する予定の業務かどうか(2)どのくらいの年数継続する予定か(3)派遣でなければならない理由はなにか――(図)。

     結果は、今後の業務の継続見込み((1)(2))について「3年超継続予定」「終期なし」との回答や、(3)の派遣でなければならない理由として「専門的業務だから」が多く寄せられた。さらに「正規職員など市職員での配置がされないため」という、常用代替そのものであることを示す回答もあった。

     回答の濃淡に応じて、部署ごとに「(3年後の)再延長は認めない」「(今回の)延長は認めない」との意見を付け、直接雇用化や常勤職員の配置を求めた。

     延長を認めず常勤職員の配置を求めた部署が約2割あったが、当局は「今後も法の趣旨を逸脱しない範囲で適正に運用する」という一般論で逃げている。制度上、派遣先事業主は過半数労組(代表)の意見を聴くだけでよく、同意は必要ない。

     3年前の法「改正」で新設された、この意見聴取の制度について、荻野さんは「常用代替に歯止めをかけられるかどうかというと難しい。ただ、この問題で市当局とやり取りした意味はあったと思う。3年後に再び同じような声が職場から上がってきたとしたら、『是正もせずに一体今まで何をやっていたのか』ということになる」と話す。

     意見書では派遣労働者の回答を踏まえ、休憩室利用や更衣室利用に関する改善も求めた。この点について当局は「利用しやすいよう環境整備に取り組む」と善処を約束している。

     

    ●「難しい働き方」

     

     市当局は派遣の利用については積極的ではない。直接雇用の臨時職員の仕事は約千のポストがあるのに対し、派遣労働は百余りにとどまる。

     直接雇用を求めるにしても自治体ならではの課題がある。臨時職員は1年の期間制限と、同一職場での任用禁止という制約があるためだ。2020年4月に施行される「会計年度任用職員」の同市での仕組みづくりや、常勤職員をいかに増やすかが課題となる。

     今回初めて行った派遣労働者への大規模な聞き取り調査の結果について、荻野さんは次のように語る。

     「非常に難しい働き方だと思う。同じ仕事をしながら、派遣会社が変わるごとに時給が下がったという声もあった。困り事があっても派遣元・先のどちらに相談すればいいかも分からない。職場では技能が継承されないという不安もある。公務の仕事は直営・常用雇用で担うべきだとあらためて感じた」

     業務に見合った人員体制の確保へ。今回の取り組みをその一歩としたい考えだ。