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    〈働く・地方の現場から〉新潟市長選の敗北を教訓に/ジャーナリスト 東海林智

     「勝てる選挙を落としているんだよ」

     10月28日投開票の新潟市長選挙。自民党前参院議員の中原八一氏(59)が、野党共闘の前新潟市議・小柳聡氏(31)と保守系の前市議・吉田孝志氏(56)、元経産官僚の飯野晋氏(45)との混戦を制した。冒頭の言葉はその結果にうめいた市民グループ幹部の声だ。 新潟市長選は4期続いた現職の退任に伴い、有力4候補で争われた。自民は中原氏と吉田氏に分裂、野党系は小柳氏、そして元官僚という構図だ。直前の沖縄県知事選でオール沖縄が自公候補を大差で破るなど、野党に良い流れが来ていた。

     

    ●保守分裂でも勝てず

     

     自民が分裂する中で、小柳氏の有利は動かないとの見方が強かった。6月の知事選で、野党共闘の候補が新潟市内で得た票は約16万票。同選挙で約18万票の保守が完全に分裂した状況を考えれば、野党共闘が成立すれば「勝機は十分」と考えるのも当然と言えた。しかし、野党系の小柳氏は約9万票しか得票できなかったのだ。

     新潟の野党共闘は、前回の参院選1人区(森ゆうこ氏当選)から知事選(米山前知事が当選)、野党系の当選が3分の2を占めた昨年の衆院選と勝利を重ねてきた。安倍1強の政治情勢の中で、野党勝利に新潟は沖縄と並び、その選挙結果が注目されてきた。それが、今年6月の知事選に続き、野党共闘は敗北した。知事選は、米山氏がスキャンダルで辞任という事情を抱えた中での惜敗。保守が完全に分裂する中で敗北した今回の市長選挙の方が影響は深刻だ。

     

    ●名ばかりの共闘?

     

     なぜ、野党共闘は勝てなかったのか。詳しい分析にはもう少し時間が必要だが、いくつかヒントはある。一つは、昨年の衆院選で「希望の党」のような存在が出てきた時のもろさだ。今回、保守の吉田氏は、4期続いた市政を徹底的に批判。地元紙の新潟日報の出口調査では、自民票に加えて立憲民主党支持者の2割、無党派層の3割弱をさらっている。野党が取るべき部分が浸食された。

     こうした状況を許す背景には、「野党共闘」と言いながら、内実が伴っていないことがある。小柳氏の選対は、友人や地元の人で作る自前の選対のほかに、旧民進系、共産や社民、市民系の各選対が存在し、意思疎通もままならない状態だった。野党議員の関係者は「何をメインに訴えるのか戦略も不明だった。政党色をなくすと言ったり、最後は自民との対決だと言ったり……」と迷走ぶりを嘆いた。

     立憲民主の県連関係者は「知事選の時のように(各党)横並びで選挙をせずに済んで良かった」とまで言う。ぎりぎりで共闘を成立させようと頑張っている市民や政党に極めて失礼なコメントが平気で出てくる。名ばかり共闘では「疑心暗鬼」しか残らない。

     

    ●勝つために何が必要か

     

     昨年の衆院選では野党共闘で当選し、知事選では選対をまとめた菊田真紀子衆院議員は共闘の現状に危機感を隠さない。連合の会合に参加し「(市長選で)本当にそれぞれ150%の力を出し尽くしたのか。しっかりした反省がなければ、参院選も勝てない。一日も早く野党が固まりになるよう力を尽くす」とあいさつした。

     菊田議員はその後、記者に囲まれてこうも言った。「この人好き、嫌い、アレルギーあるなんて言っているようじゃ、自民党には勝てない。自民党はなんでもやるんだから」

     野党共闘のお手本と言われた新潟の重い現実を、各地の教材としなければならない。