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    沖縄レポート/天皇在位30周年式典の欺瞞/辺野古県民投票の2月24日

     1月17日に配信された共同通信記事に絶句した。

     「政府は、2月24日に東京・隼町の国立劇場で開催する天皇陛下在位30周年記念式典の詳細を決めた。福島県の内堀雅雄知事が国民代表として感謝の言葉を述べるほか、天皇陛下が作詞、皇后さまが作曲された琉歌を沖縄県出身の歌手三浦大知さんが披露する」

     天皇夫妻自身が望んだことなのかは分からない。ただ主催は政府であり、政府が決定したことだ。沖縄の民意を踏みにじって辺野古の海に土砂を投入し続ける暴挙を「全力で」(菅義偉官房長官)敢行しているのは日本政府だ。心の中に冷たいさざ波が広がった。

     

    ●国策犠牲者の救済演出?

     

     福島県知事が「国民代表」として天皇に感謝の言葉を述べる。国策の犠牲となって救済不能な権利侵害の渦中に置かれたままの福島。その代表である知事が「国民代表」とされ、天皇に感謝する。天皇に感謝したい福島県民は多いのであろうが、そのように演出する政府のあざとさ。

     天皇の琉歌は、皇太子として沖縄を初訪問した際、ハンセン病療養所施設・沖縄愛楽園で歓待された印象を基に作られたという。その時には、ひめゆりの塔で火炎瓶を投げつけられる経験もしている。沖縄、福島、ハンセン病…。国策の犠牲となった人々を、天皇によって包摂し救済を装うという天皇制の政治的欺瞞(ぎまん)。それが今回の式典に集約されているように見えて仕方がない。

     しかも、式典が行われる2月24日は、辺野古埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票の日である。全国のメディアはどう報じ、全国の「国民」はどう受け止めるのだろうか。

     県民投票は約10万人の有権者の署名を受けて県議会で可決成立した条例に基づいて実施される。しかし、5市が、市議会の反対を理由に実施を拒否している。自民党の勉強会で国会議員が「議会として予算案を否決することに全力を尽くすべきだ」と明記した資料を配付し、説明していたことが判明した。県民投票をめぐって分断が鮮明になっている。支配者にとって都合のいいように内部対立を作る露骨な植民地統治の構図だ。

     県民投票は地方自治法に基づく住民投票の一つで、前例は1996年の沖縄県民投票しかない。その後の地方自治法改正で、機関委任事務が廃止された。公職選挙法に基づく選挙事務は法定受託事務として市町村長の義務となっているが、住民投票は違う。その弱点を突かれた面もある。

     しかし、県条例で確立された投票権が市町村長の判断で行使できないのは法の下の平等に反し、憲法違反だ。今のままでは有権者の約32%が投票できない。沖縄市に住む玉城デニー知事もその一人だ。「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表は5市長の翻意を求めて15日からハンガーストライキを行った(19日にドクターストップで中止)。

     

    ●この仕打ちは何なのか

     

     辺野古の海がつぶされようとしている。沖縄県民は常に分断され苦悩を強いられている。今年は武力を背景に琉球を無理やり日本に組み入れた、1879年の「琉球処分」から140年。そのさなかに、天皇に感謝するイベントで沖縄出身歌手が天皇の琉歌を歌う。「国民」は沖縄が包摂されたと祝うだろうか。この「仕打ち」は何なのだろうか。(ジャーナリスト 米倉外昭)