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    インタビュー/(上)ボトムアップで所得向上を/立憲民主党最賃チーム座長/末松義規衆議院議員

     立憲民主党は今年2月、最低賃金作業チームを党内に発足させ、4月に報告書をまとめた。そこでは所得アップ主導による、足腰の強い経済回復・成長を実現するとして、政権獲得後5年以内に1300円実現という公約策定にレールを敷いた。特徴は、中小企業支援の大規模な政策パッケージを打ち出したた点。参院選の公約には反映されなかったが、「全国一律制が必要」がチームの総意だった。座長を務めた末松義規衆議院議員に聞いた。

     

    ●6千万勤労者を底上げ

     

     ――報告書の狙いは?

     末松 所得アップ主導型の経済回復をやらなければいけないというのが立憲民主党の考えだ。今の安倍政権は一部の富裕層や大企業をより潤わせる、偏り過ぎた政策をやっている。大企業の労働分配率は43%と、戦後最低レベルにまで落ち込んだ。

     実質賃金は安倍政権下で下がりっ放し。消費が伸びないのは、6千万人の勤労者の可処分所得が増えず、その家族の消費が向上しないのが最大の要因だと考えている。

     まずは庶民の所得アップが、足腰の強い経済回復と経済成長への一番の道だ。富裕層と大企業を潤せば全体が豊かになるという、現政権のトリクルダウン理論はインチキと言わざるを得ない。ボトムアップ型こそ効果的だ。

     そう考えた時に、日本の最低賃金はあまりに低すぎる。全国加重平均で874円、最高額が985円で、最低額が761円。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国では最低レベルだ。消費が伸びない最大の要因は最賃の異常な低さにあると認識し、チームとして、まずは最賃を引き上げ、低所得層の所得向上が必要との結論に至った。

     世界に目を向ければ、フランスが1338円で、ドイツが1152円、英国は1179円、米国はカリフォルニア州とワシントン州が1325円、オーストラリアに至っては1500円にもなる。

     これらを見れば、「賃金が上がると、国際競争力がなくなり日本企業がつぶれる」という経団連風の理屈は成り立たない。実際に欧州がこういう形でやっているのだから。そこで、専門家を呼んで検討し、5年かけて1300円を目指すことが妥当となった。

     

    ●生計費の算出が必要

     

     ――金額の根拠は?

     千円だと、法定労働時間働いたとして年間で196万円。これではあまりに低過ぎる。英国は最賃について、労働者全体の賃金の中央値の60%の水準にしようという動きがある。日本に当てはめれば1211円だ。

     昨年11月の大手求人サイトの平均時給をみると、三大都市圏で1556円、フルタイム有期が1411円、パートが1179円だった。この実勢賃金の現状からみて、5年後に最賃を1500円にするには無理があると判断した。でも千円は低すぎる。他の先進諸国を見て、1300円とした。

     ――キリのいい数字?

     本当は、「人間らしく生活できるような基本的生計費用」を算出し、最賃の水準を決めるのがベスト。国内外の公的な機関で、そのような定義や概念設計があるかを調べてみたが、なかった。

     人事院の生計費調査についても算定根拠が不明。連合がさいたま市で試算したリビングウェイジや、一部学者による試算はあるが、権威ある機関の試算がない。この点は政治がしっかり取り組む必要がある。

     ――全国一律制については検討しましたか?

     検討チームとしては「全国一律が望ましい」というのが総意だ。地域間格差は年々拡大している。1988年に80円だったのが、2018年には224円になった。

     今後人口が減少していくことを考えれば、人が地方から大都市に集中するのはよくない。地方は物価や家賃が安いというが、みんな自家用車が必要で、それなりに維持費がかかる。地方を豊かにし、一極集中も解消できる。

     ただ、党の最終決定で最低額の761円を5年で1300円にできるか、不安視する声があり、政権に就いた場合の公約として「5年以内に時給1300円」という表現になった。思いは全国一律だ。