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    インタビュー/〈給特法改正問題〉・下/労働組合の力が問われる/萬井隆令龍谷大学名誉教授

     ――36協定の締結は教員の働き方にどのような効果があるのでしょうか。

     36協定には(1)対象者(2)残業時間の長さ(3)残業する業務内容(4)対象期間――などを書かなければなりません(36条2項)。学校の教員の過半数代表が校長と協議して決めるのですから、当然、現場で業務の見直しが必要になります。校長も教育委員会から降りてきた仕事をそのまま教員に丸投げというわけにはいかなくなる。その機会を生かせるかは、代表や組合の力量と努力次第であり、責任も重いものです。

     ――給特法を背景にした長時間労働が社会問題になる中、政府は1年単位の変形労働時間制を自治体の条例で導入可能にする法案を国会に提出しました。

     1年単位の変形労働時間制は、本来は労使協定の締結が不可欠です(32条の4)。32条から逸脱した例外的な働かせ方だからこそ、協定による合意が求められるのです。

     自治体の条例で導入可能となれば、一般の労働者とのバランスを大きく失する。なぜ、教員のみ労使協定なしに導入できるのか、合理的な根拠は見つけられそうにもありません。

     教員も生身の生きた人間です。バイオリズムから考えても、労働時間制は1日の最長を制限する、32条に立ち戻る必要があります。

     ――過労死の遺族や現職の教員個人が法案撤回を求める署名に取り組んでいます。

     「闘争なくして権利なし」という言葉があります。年間約5千人が心を病んで教壇に立てなくなっています。ただ事ではありません。当事者の教員は多忙なあまり、声を上げにくい状況ですが、そのような中、個人で残業代請求の訴訟を起こした現職教員もいますし、教員を目指している学生たちも、その裁判を支援し、教員の増員や長時間労働の解消を求める運動に立ち上がっています。

     教員には給特法を自分の目で読み直すことと、36協定の締結を基本に据えた運動が求められているのではないでしょうか。