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    〈核兵器廃絶の課題〉相反する二つの流れ鮮明に/問われ続ける日本の役割

     今年の広島、長崎での核兵器廃絶を求める集会は新型コロナウイルスによる感染拡大で中止・縮小を余儀なくされた。連合加盟のある産別担当者は「現地で(集会を)開催できない意味は大きい。被爆地に行かなければ伝わらない雰囲気がある」と話す。

     昔、先輩から「8月6日午前4時頃、広島の平和記念公園に行ってごらん。本当の広島が見えてくる」と言われ赴いたことがある。そこには暑さを避けて夜明け前から原爆供養塔に手を合わせる被爆者たち、被爆者を支える家族やボランティアの姿があった。「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に祈りを捧げてから出勤する教職員の姿もあった。

     被爆者は平均年齢83歳を超え、被爆者のいない世界が近づきつつある。被爆者から直接、被爆体験を聞く機会も少なくなる中、運動をどう継承していくのか、大きな課題に直面している。

     

    ●唯一の戦争被爆国として

     

     国連の中満泉事務次長が「核軍拡競争が始まりつつある」と危機感を表したように、核兵器の小型化も含めて使用される危険は増している。一方で、2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は現在、44カ国が批准し、発効まであと6カ国に迫っている。世界には相反する大きな二つの流れがある。

     核兵器禁止条約を批准しない日本政府に対して、内外から多くの批判の声が上がる。唯一の戦争被爆国としての政府の態度、労働組合を含めた取り組みの真剣さが問われている。(山本美奈子記者)