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    教員に1年変形制導入へ/北海道議会が条例案/「現場無視だ」と教職員組合

     公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制(以下、1年変形制)を導入する条例案が北海道議会に提案されることが11月18日、明らかになった。年内に可決されれば、来年4月1日施行の見通しだ。道内の教職員組合は「学校現場の意向が反映されていない」などと反発し、一方的な導入に警戒を強めている。

     1年変形制は、公立学校教員の残業時間の扱いを定めた給特法が改正され、自治体の条例で導入が可能になった。北海道教育委員会は9月、道立学校校長と市町村教育委員会教育長(札幌市除く)宛に導入の意向調査をネットで実施。その結果、「21年度から活用できるよう導入を検討したい」が40%、「21年度は難しいが、22年度以降活用できるよう検討したい」が41%に上った。一方、「活用・導入の予定なし」(6・38%)などの回答理由では、教育職員から要望がないことや時期尚早などが挙げられた。

     小玉俊宏教育長は10月の会見で「8割の学校の職員が活用できるように検討したいというお答えがあります」と発言していた(その後、会見録から「学校の職員が」の部分を削除)。

     

    ●当事者なき「意向調査」

     

     道内の教職員組合は、意向調査を問題視する。

     北海道教職員組合(日教組加盟)の山谷一夫書記長は「一番の問題は、回答者が校長や教育長で、現場の教員の声ではないこと。教育委員会への忖度(そんたく)が働く」と指摘する。

     北教組が行った9月の勤務実態調査によると、「在校等時間(残業)月45時間上限」を超過した教員は小学校51・5%、中学校71・9%、高校72・2%に上った。北教組はまずは、業務削減の具体的な内容を明確に示すと共に、一方的に適用しないよう、今後も交渉を行うことを確認している。

     全北海道教職員組合(全教加盟)の斎藤鉄也書記長は今回の意向調査について「組合の調査で9割以上の教員が意見を聞かれていないと回答した。当事者である教員の意思が反映されるべきだ」と述べ、プロセスを軽視する姿勢を批判。その上で、「学校でも新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、教員は必死に対応している。コロナの惨事に便乗して条例を通すのは許せない」と憤る。

     

    〈解説〉持ち帰り残業の対策を

     

     北海道や秋田県、高知県などの市区町村議会では、1年変形制の導入に反対する意見書が採択されたケースもあり、運動が広がっている。

     岐阜県では教員や市民らによる「岐阜県の学校教育をよくする会」(西村祐二代表)が10月、県教育委員会に対し、条例を提案しないよう求める要請書を提出した。メンバーで名古屋大学の内田良准教授は「教員は職場に迷惑をかけないように書類上は残業を(上限規制の)月45時間以下で書いてしまうのではないか。休憩時間も働くなど、教員には〃見えていない残業〃が多く存在する。他業種と比べて特徴的なのが持ち帰り残業だ」と指摘した。

     熊本県の元小学校教員の男性が脳幹出血を発症し、公務災害認定を求めた訴訟では、持ち帰り残業の時間が争点になった。福岡高等裁判所は、自宅での業務を余儀なくされたとして公務災害を認め、10月に確定した。しかし、発症前1か月の持ち帰り残業について男性が93時間13分と主張したのに対し、認められたのは41時間55分で、半分以下だった。発症から9年が経つ今も男性は重度の障害のために言葉を発することもできず、寝たきりが続く。持ち帰り残業の問題を放置したままで1年変形制を導入するのは危険すぎる。

     コロナ禍で少人数学級の議論が本格化するなど、教育への関心は高まっているものの、教員の労働条件や就労環境の議論は当事者が声を上げにくく、世論にも繋がりにくい。教育条件の充実のためにも、1年変形の条例化問題をきっかけに、地域での議論が求められている。