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    店長らが労働審判申し立て/富士そば労組/長時間労働の是正求める

     首都圏を中心に展開する立ち食いそばチェーン「名代富士そば」の係長や店長ら18人が未払い残業代など約2億4785万円の支払いを求めて東京地方裁判所に労働審判を申し立てた。店長らの長時間労働が常態化しており、心の病を発症するケースが相次いでいるという。11月13日、記者会見を開き、訴えの内容を明らかにした。

     

    ●「定時で帰れていたら」

     

     係長や店長らが会見で長時間労働の実態を訴えた。

     ある店長は、妻から「富士そばはホワイト企業だから」と促され働き始めた。昨年には店長に昇格、残業する毎日となった。昨年10月、台風19号の影響で避難勧告が発令された際も常務から「店舗待機」の指示が出た。妻からは「小さい子どもがいるのに。家族を守ってくれないの」と言われたが出社し、翌々日の午後6時まで35時間勤務をこなした。帰宅すると妻子は家を出ていたという。

     その後、病気を発症。手術したが、復帰後の激務で傷口から大量に出血し病院に運ばれた。心の病も患い、休職に追い込まれた。「悔しい思いだ。(富士そばで働いたことで)離婚や病気になるなんて予想もしていなかった」

     別の店長も、取り返しのつかない後悔の念に苦しむ胸の内を語った。

     「長時間労働で残業の日々。昨秋、残業を終えて帰宅するとがんを患っていた妻が玄関で携帯電話を握りしめて亡くなっていた。定時で帰れていたら妻を助けることができたかもしれないと思うと無念で後悔の気持ちでいっぱいだ。今の経営方針では従業員全員が明日はわが身。その状態を改善したい。未払い残業代が支払われたら妻のお墓を建てたい」

     

    ●47人で労組結成

     

     申し立て人は千葉のなのはなユニオンの組合員。係長や店長ら47人で5月2日に富士そば労働組合を結成した。長時間勤務の中で準備し、結成にこぎつけた。安部茂人委員長は「店長が長時間労働で心の病になり、働けなくなるケースが相次いでいる。店長を含め、働く者がいてこそ会社は成り立つ。なんとか良い会社にして、これ以上苦しむ人が出ないようにしたい」と語った。

     結成後、団体交渉を3度行ったが決裂したため、労働審判の申し立てに踏み切った。

     

    〈写真〉富士そばでは店長らの長時間労働の実態が勤務表改ざんにより、なかったことにされている。実態を明らかにする安部委員長(右 11月13日、都内)