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    〈安倍政治を検証〉(3)                        国民から逃げたということ/上智大学国際教養学部教授 中野晃一さん

     安倍首相の辞任は結局、数々のスキャンダルと国民への説明責任から逃げた、ということでしょう。もちろん病気もありますが、憲法改正などやりたいことができず、コロナ対応のまずさもあって行き詰まり、首相在職年数の最長記録達成を待って辞めたという図式です。

     

    ●行政・政治を私物化

     

     安倍政権の7年8カ月を振り返ってみます。

     当初は経済政策のアベノミクスを前面に出していました。それと抱き合わせで集団的自衛権の行使を可能にする安保法を強行した2015年がピークで、この頃から国会軽視・憲法軽視の姿勢がひどくなりました。

     そして、森友学園問題が発覚した17年が転換点となり、裏でやってきた行政・政治の私物化のあれこれが隠し切れずに表に出てきました。政権の終わりが始まったのです。

     改憲など本来やりたい政策ができなくなる中、国民や国会からはスキャンダルなどの説明をしろと言われる。まともな説明ができない状態が続き、今度はコロナ対応のまずさが露呈。自分は何のために首相をやっているのか、正直分からなくなってきたのではないでしょうか。

     6月の国会閉会以降、ほとんど国民の前に出てこなくなりました。体調悪化があったにせよ、これは職務放棄です。ついに有権者に説明責任を果たそうとはしませんでした。

     国会では与党が圧倒的多数でも、ずっと国民から逃げているのは無理です。臨時国会や、場合によっては求心力維持のための内閣改造が控えていました。時間がたてば、国民の前へ出てこなくてはならず、もうどうにもならなくなったのだと思いますよ。

     

    ●中身ない菅さん

     

     安倍政治を引き継ぐという菅さんは、総理になるべくしてなった人ではなく、その資質もありません。安倍首相が急にさじを投げた時点で「安倍なき安倍内閣」を続けるなら、彼しかいなかったというだけのことです。

     菅さんは安倍政権を擁護するため、裏方として番犬・闘犬の役割を先頭に立って果たしてきました。どう喝と威圧の手法にたけた人ではありますが、安倍さんと違ってイデオロギーや、どうしてもやりたいことがあるわけではない、中身がないのが特徴です。

     

    ●メディアの体たらく

     

     安倍首相の辞任後、内閣の支持率が急騰しました。これは、ひとえにメディアの体たらくによるものだといえます。

     ルールをねじ曲げて実施した、正当性なき自民党総裁選をメディアは盛り上げるのに必死でした。「菅さんはパンケーキが好き」なんて、どうでもいいことです。国民の多数が蚊帳の外の総裁選を、いかにも大事なもののように扱うのはどうかしています。そんな時間があるなら、総選挙や国会中継に時間を割いてほしい。

     高支持率はテレビに出続けることでつくられた、メディア現象です。米国のトランプ大統領や小池都知事、吉村大阪府知事の人気と同じことでしょう。

     

    ●野党の責任は重い

     

     今後、野党の責任は一層重くなります。継承された安倍政治に代わる選択肢を渇望している有権者はいっぱいいます。そのための政策合意と選挙での野党共闘(候補者一本化)で期待に応えられるかどうかが問われます。