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    抱き付き作戦と政党隠し/新潟県知事選与党系の勝因                                ジャーナリスト 東海林智

     全国的な注目を集めた新潟県知事選挙(6月10日に投開票)では、政府与党の自民、公明両党が支援する花角英世氏が、立憲民主をはじめ野党5党などが推薦する元県議の池田千賀子氏らを破り、当選した。

     「この結果は(総裁選挙での安倍首相3選に)良い風が吹いてきたということ。そう判断して間違いない」。10日夜、自民党の二階俊博幹事長は上気した顔でこう語った。花角氏は〃県民党〃を標ぼうして選挙を戦ったが、二階幹事長の言葉からは〃県民党〃とは裏腹の、徹底した組織選挙だったことが透けて見える。

     

    ●原発政策で争点隠し

     

     米山隆一前知事は、日本最大級の東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な姿勢を示して当選した。(1)福島第1原発の事故原因(2)避難計画の実効性(3)事故が被災者の暮らしや身体に与える影響――を県独自に検証する委員会をそれぞれ設置し、検証が終わるまで再稼働の判断はしないと言明していた。いわば、国からの再稼働圧力に対峙(たいじ)する最後のとりでとなっていた。

     前回選挙での米山氏の勝因は、原発再稼働に対する県民の根強い反発だった。与党候補は再稼働を必ずしも否定せず、そのあいまいな態度が不信を招いた。そこで今回、花角氏は〃抱き付き作戦〃ともいえる作戦を取った。

     花角氏は、米山氏が進めた「三つの検証」を引き継ぐと言ったのだ。同じく米山氏の路線継承を訴えた池田氏との違いが見えづらくなった。

     さらに、池田氏が再稼働をめぐって「県民投票」を打ち出すと、花角氏は再稼働の是非を判断する場合は、知事職の辞職・再出馬などで「県民の信を問う」とまで述べた。与党陣営の幹部は「無党派の7割は『原発再稼働ノー』だ。原発問題で言い方を間違えなければ、無党派層は副知事もやった花角氏の経験に安心感を持つはず」と狙いを語った。

     

    ●野党側に対応の遅れも

     

     一方、池田氏が「原発ゼロ」などの厳しい言葉で訴え、違いを強調したのは選挙最終盤になってからだ。池田氏の選対関係者は「『原発ゼロ』の言葉を使うかでもめた。寄り合い所帯なので、その言葉を使っては駄目だというグループもあり、対応が遅れた」とこぼす。与党側は自らの原発方針とは違う花角氏を「黙認」したが、野党は腹をくくれなかった。

     与党側の狙いが功を奏したのか、無党派層が多く、選挙では野党票が多く出るはずの新潟市内で花角氏は野党側を引き離した。従来の選挙では、野党は農村部で離された分を都市部で取り返し競り勝つ形だ。だが、今回の選挙では農村部での差はそれほど広がらず、都市部で競り負けた。(つづく)