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    「格差是正へ一歩前進」                        郵政20条裁判の最高裁判決/手当の趣旨を個別に判断

     日本郵便で働く有期契約社員が正社員との処遇格差は不合理で労働契約法20条違反と訴えていた三つの裁判で、最高裁判所第1小法廷(山口厚裁判長)は10月15日、判決を言い渡した。五つの手当や休暇の不適用を不合理と認め、損害賠償額確定が必要なものは高裁に審理を差し戻した。会社側上告は全て棄却した。

     認められたのは(1)年末年始勤務手当(2)祝日給(年始期間)(3)扶養手当(4)夏期冬期休暇(5)病気休暇(有給)――の五つ。住居手当の支給は審理せず、高裁判決が確定している。

     年末年始勤務手当と祝日給は、多くの労働者が休む中、最繁忙期である年末年始の勤務の対価だとして、同じ郵便業務に従事する契約社員に支給しないのは不合理とした。契約社員にも扶養家族があり、相応に継続的な職務が見込まれるのであれば、扶養手当の支給は妥当と判断。有給の病気休暇も同様の見込みがあれば、生活保障を図り、療養に専念させ雇用を確保する制度の趣旨を契約社員にも容認した。夏期冬期休暇を与えないのは不合理とした上で、取得できなかった分の損害を認めた。

     判決は、労働条件の趣旨を個別に考慮する最高裁判例(ハマキョウレックス事件)の枠組みを踏襲した。不合理性の判断にあたり勤続年数5年超の人だけを対象とした大阪高裁の判断については、「相違を設ける根拠は薄弱」として認めなかった。

     

    ●早期に全面解決を

     

     日本郵便で働く従業員のうち有期契約労働者は約18万5千人で半数近くに上る。判決の影響は大きい。

     同日の会見で原告側の水口洋介弁護士は「手当や休暇の格差を不合理と認めた判決は一定の評価ができるものの、賞与の上告を受理せず、是正しなかった点は不満が残る。なんとか踏みとどまった判決だ」と評価した。全国で154人が立ち上がった集団訴訟の意義に触れ「会社は判決に従って、直ちに損害賠償を払い、早期に全面解決すべき」と訴えた。

     賞与や退職金の支給を争った大阪医科大事件やメトロコマース事件と明暗が別れた理由について、森博行弁護士は「(郵政での)手当の性格や支給目的は、長期雇用のインセンティブや正社員の登用制度といった事由と関係がない。繁忙期の労務対価の支給などであり、手当の趣旨が明確だからだ」と指摘した。

     判決が認めた手当の支給には大きな波及効果があると強調し、原告と共に「完全勝利や」と笑顔を見せた。一方、「住居手当はすでに廃止された。次は扶養手当が廃止されるのでは」と懸念も示した。裁判で認められた手当が労使合意(日本郵便とJP労組)で廃止されているためで、「その動きを止められないのがもどかしい」と苦言を呈した。

     

    ●原告ら喜びの声

     

     浅川喜義さんは約6年に及ぶ裁判を振り返り、「同じローテーションで一緒に働く正社員が証人になり、司法を動かした。法廷に立つのは難しかったと思うが、正社員と業務が同一だと認めてもらいたかった」と述べ、多くの支援に感謝した。

     判決はとてもうれしいと岡崎徹さんは喜んだ。「非正規が増える分だけ、社会は痛む。裁判は終わったが、運動を続けていきたい。日本郵便は速やかに(是正の)雇用制度の見直しを検討すべき」と求めた。

     竹内義博さんは、同じ日本郵政グループで働く妻の抗がん剤治療を支えた経験から、病気休暇の必要性を訴えた。「妻の年休はあっという間になくなり、治療と勤務の両立は無理があった。高額療養費制度の請求までに何百万円も費用がかかる。もし、独身でがんになったらどうなるのか。治療費は払えず、病院に通うことすらできなくなる」と語った。

     

    〈写真〉裁判を通じて住居手当など6項目が契約社員にも認められた(10月15日、東京の最高裁前)