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    〈海外情報〉中核的労働基準を修正                   ILO総会/安全で健康的な労働条件を追加

     国際労働機関(ILO)は6月10日、スイス・ジュネーブで開催していた年次総会で、安全で健康的な労働条件で働く権利を「中核的労働基準」に加えた。

     中核的労働基準とは、数あるILO条約や勧告の中でも、各国が必ず順守すべき最も重要な分野のこと。これに言及した「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言(1998年)」は(1)結社の自由と団体交渉権の承認(2)強制労働の禁止(3)児童労働の廃止(4)雇用および職業における差別の撤廃――をこれまで掲げてきた。今年の総会は、この宣言を初めて修正し、安全衛生の分野を追加した。発効は2年後。

     新たに該当する条約は、「職業上の安全及び健康に関する条約(155号)」と「職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約(187号)」。

     日本政府は、155号条約が未批准。(1)~(4)の分野では、「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(111号)」も批准していない。「強制労働の廃止に関する条約(105号)」は、今国会で批准したばかりだ。

     ILOは「条約が未批准でも、加盟国にはその尊重、促進、実現の義務がある」としている。

     近年、多国籍企業の行動規範や貿易協定でILOの中核的労働基準が引用されるケースが増えており、そうした観点からも今回の総会決定は意義が大きい。

     国際労働組合総連合(ITUC)は、3年越しの取り組みが実ったことを歓迎。「毎年300万人が仕事で命を落とす中、コロナ禍で健康を守ることと生活の糧を稼ぐことの板挟みになっている労働者の保護が強く求められる」と述べている。

     国際食品労連(IUF)は総会中、ブラジルや米国、スイスなどの加盟組合とワークショップを開き、ファストフード産業の職場で多発する、やけど・転倒事故やセクハラの問題への対策を議論し、この取り組みを支持した。(労働ジャーナリスト・丘野進)