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    認知症500万人時代/よくある三つの「勘違い」

     認知症の高齢者は厚生労働省推計で約462万人。85歳以上では4人に1人という調査もあります。誰にとっても「人ごと」で済ませられない問題です。にもかかわらず、認知症への誤解が多いのも実情。症状をめぐってよくある「勘違い」とは?

     

    ●誤解(1) 認知症で一番困るのは家族や周囲?

     

     一昨年発表された内閣府の世論調査によると、自身が認知症になったときに「家族に負担をかける」と不安を感じている人は75%。多くの人が〃認知症=周囲が困る病気〃というイメージを持っていることが分かります。

     これに対し首都圏の総合病院に務める認知症看護認定看護師のAさんは「一番困っているのは認知症の方ご本人。そのことを周囲が理解することが症状を軽くし、介護負担の軽減につながります」と話します。

     認知症になると、(1)記憶障害や理解・判断力の低下といった「中核症状」、(2)徘徊(はいかい)や興奮・暴力、不潔行為など「行動・心理症状」(BPSD)──という二つの症状が見られるようになります。BPSDは周囲の環境や人間関係などの影響が大。症状によっては「毎日知らない場所で知らない顔に囲まれている」と感じる人もいます。そうした不安や焦燥感がBPSDにつながるのです。

     「徘徊をする方は『わが家に帰らなくては』といった目的があるんです。でも、どう行くのかが分からない。周りも大変ですが、一番辛くて困っているのは本人。その苦しみに寄り添い、安心感を与えてほしい」とAさんは訴えます。

     

    ●誤解(2) 何も分からず、何もできなくなる?

     

     認知症になると、直前にあったことを忘れてしまったり、時間の感覚が薄れたりと、身の回りのさまざまなことに不自由をきたします。しかし、「何もできない」「何も分からない」というのは間違いです。

     埼玉県に住む80代の女性は、料理など段取りが必要な作業は難しくなりましたが、食器洗いや洗濯、犬の散歩などはまだ大丈夫。できないことは夫の協力を得ながら、明るく自宅で過ごしています。

     「こんなこともできなくなったの!」とマイナス面ばかりに目が行きがちですが、「こんなことがまだできる!」に考え方をシフトすることが大切だと、Aさんは強調します。

     「できないことに注目すれば本人も介護者も気持ちが暗くなります。でも、できることをやってもらって、褒めてあげれば誰でもうれしいじゃないですか。そのことがBPSDの発症を抑制し、介護を楽にしてくれるんです」

     

    ●誤解(3) うれしいこと、悲しいことも忘れる?

     

     認知症の過半を占めるアルツハイマー型は脳が萎縮する病気ですが、感情をつかさどる脳幹部分の機能は残ります。そのため、記憶力や判断力は低下しても、喜んだり、悲しんだりという感情は失われません。。「認知症の人だから」と無視をされたり、「こんなことをして!」と叱られたりすれば、悲しかったり、恥ずかしかったり。そうした心情は健常者と同じなのです。

     都内の認知症対応型デイサービスで相談員を務めるBさんは「皆さん、好き・嫌いの感情が豊かです。私たちの名前や顔は覚えていないし、ここがどこなのかを忘れてしまう人も多いですが、『心地よく過ごせる』『楽しい』といった感情は残っていて、次の来所時の態度にあらわれます。ですから接するときの笑顔が大切です」。

     認知症介護は10年、20年と続く長期作業。怒ったり、悲しんだりの毎日では、介護する方もされる方も身が持ちません。Bさんは「肩の力を抜いて、笑顔を忘れないことが、介護を頑張れるこつです」とアドバイスしてくれました。