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    東京五輪・パラリンピックのボランティア

    商業イベント化しているのに無償?


     2020年に予定されている東京五輪・パラリンピック。8万人のボランティアに大会運営のサポートを担わせるというのが組織委員会の方針です。9月26日から募集が始まりますが、問題もいろいろ浮上しています。 

     

     「東京五輪・パラリンピックのボランティアに参加したいと思いますか?」――今年6月発表されたNHKの調査で、この質問に「思う」と答えた人の割合は15%にとどまりました。

     組織委が大会運営に必要なボランティアとして募集している業務は9分野(表)。「こんなことまでボランティアで回すの?」と首をひねりたくなる活動が多数含まれています。

     自発的な活動であるはずのボランティアなのに、「大会期間中とその前後で10日以上」「1日8時間程度」などの活動条件を課していることにも疑問が出されています。

     

    ●「責任の所在」があいまい

     

     雇用労働と異なる「ボランティア」という形態への不安もあります。

     炎天下の案内業務で熱中症になった場合でも、雇用関係がないので、組織委員会に責任を求めることができません。ボランティア保険は用意されますが、十分な保障が受けられるのかは不明。事故や災害はあくまでも自己責任です。

     自己負担額もばかになりません。「一定程度の交通費」や「活動中の飲食」は、組織委負担としていますが、具体的な金額や支給方法は未定。

     遠方から参加する場合でも宿泊費の支給は一切なし。参加が義務づけられる事前研修やオリエンテーションに参加するための交通費や宿泊も「自己負担・自己手配」が求められます。

     

    安易な学生動員に批判の声

     こうした参加条件については「ブラックボランティア」との批判まで出ていますが、8万人のボランティア確保は至上命題。そこで狙われているのが学生の大量動員です。

     スポーツ庁は7月、全国の大学へ向けて五輪・パラ大会開催期間中の学内スケジュール変更などを求める通知を送付しました。大会中、授業や試験を行わず、学生にボランティア参加を推奨するよう各大学にお願いする内容です。

     これを受け、すでに都内の複数の大学では「定期試験の繰り上げ」「ボランティアの公欠扱い」などの措置を行うと発表しました。

     「国際的なイベント開催に貢献したい」とボランティア参加を希望する学生はもちろんいるはず。でも一方では、「国威発揚イベントへの学生利用。戦時中の学徒動員か」などの批判も聞こえてきます。

     大会には、スポンサー企業などから4千億円もの巨額な協賛金が集まっています。会場建設や周辺施設の整備など経費は総額1兆円超。にもかかわらず、スタッフ8万人は無償ボランティア?

     選手と間近に接するような魅力的なボランティアはごく一部で、大多数は炎天下の会場で観客を誘導したりといった重労働です。大会運営に必要なスタッフには適正対価を支払う――こうした姿勢を東京大会の「レガシー」(遺産)として未来に残すことはできないのでしょうか。