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    弱者いじめの消費税

    ジャーナリスト・斎藤貴男さんに聞く

    〈写真〉ジャーナリスト/1958年東京生まれ。「日刊工業新聞」記者などを経てフリー。「機会不平等」(文春文庫)、「ルポ改憲潮流」(岩波新書)、「消費税のカラクリ」(講談社現代新書)など著書多数。連合通信「生活文化特集」に「レジスタンスのすすめ」連載中


     消費税の税率が8%から10%へ引き上げられる予定の10月まで、半年。長年にわたり「消費税は弱者いじめの、卑劣な税制」と批判してきたジャーナリスト、斎藤貴男さんにあらためて問題点を聞きました。

    苦しめられる中小・零細

     消費者は消費税を自分たちが払っている、その仕組みも知っていると思っていますが、実はこの税制はよく理解されていないというのが私の実感です。

     消費税を理解する上でのポイントは二つです。消費税は原則あらゆる商品・サービスの、すべての流通段階で課税される税金であること、そして納税義務者は消費者ではなく年間売上1千万円以上の事業者ということです。

     公共料金以外の価格は市場原理で決まるわけですから、事業者が「コスト+利潤+消費税」で販売価格を決めていたら、競争に負けてしまいます。競争が激しい業界ほど、あるいは元請けと下請けの関係が厳しい業界ほど、弱者は値引きを強いられ、消費税を転嫁することができません。

     しかし事業者には納税義務があるために、利益を削り、さらにコストを削り、場合によっては赤字になっても消費税を納税しなければなりません。いまや零細であっても、ほとんどの事業者が課税事業者です。

     

    弱者ほど犠牲になる税制

     弱者いじめのこんな税制では、日本は中小零細の事業者が存在できない国になり、多くの労働者も働く場を失ってしまいます。飲食店はチェーン店、商店はコンビニだけという社会になりかねません。

     消費税には仕入れ税額控除という仕組みがあるために今後、直接雇用するより派遣社員の方が節税になるということで、従業員を派遣に切り替えるという事態も進むでしょう。

     消費税が10%になれば、こうした問題はさらに深刻化する一方、税率の15%、20%への引き上げという主張も出てくるはずです。

     

    新聞が批判できない理由

     10月からの増税は本当に実施するのかどうか、土壇場までわかりません。主導権はあくまで安倍首相にあり、結局、夏の参院選を巡る状況次第です。改憲を視野に入れながら与党が圧勝できないと予想すれば、安倍首相は人気取りのために増税を延期するでしょう。逆に「勝てる」と判断すれば、増税に踏み切ります。

     消費税をめぐってはマスコミ、特に新聞社の姿勢も問われます。税率が10%に引き上げられる時、新聞は食料品とともに税率が軽減されます。ということは、新聞社は消費税をめぐって安倍政権に逆らえないということを意味します。まさに馬の鼻先にニンジンをぶら下げているようなもの。このエサがある限り、政府は新聞社に、永久に言うことを聞かせられるのです。

     

    「社会保障のため」のウソ

     「消費税は社会保障のために公平な税制」という見方があります。リベラルとされる人も結構賛同していますが、まず現在のような政権の下でいわゆる福祉国家は絶対に実現しません。税率だけが上げられて、弱者だけが割を食うことになるでしょう。

     「社会保障の財源に」というのも大うそです。先の引き上げの際、「増税分は全額社会保障に充てる」といわれましたが、それまで社会保障に使われていた財源は別の用途に使われ、元々あった財源に増税分が上乗せされたわけではありません。

     イカサマだらけの消費税の増税。多くの人がそのおかしさについて気が付いてほしいと思います。