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    最賃、せめて1300円に!

    引き上げで超格差社会の是正へ

    ~経済評論家・森永卓郎さん


     最低賃金の改定審議が間もなく始まります。安倍政権は2020年代半ばまでに全国平均千円の目標を掲げていますが、経済評論家の森永卓郎さんは超格差社会化を是正するためにも、せめて時給1300円程度への引き上げを政治決断すべき――と話します。

     

     アベノミクスは大企業と富裕層には莫大(ばくだい)な富をもたらしましたが、庶民にはほとんど恩恵をもたらしていません。特に非正規労働者の賃金はめちゃくちゃ低いままです。

     日本の企業の内部留保は450兆円、現預金の保有残高は260兆円と、〃カネ余り〃は過去最高を更新しています。一方、働く者の実質賃金は安倍政権下で5%も低下。「超格差社会」化が進行中です。

     これを是正するために、政府が唯一直接コントロールできる所得政策が最低賃金です。日本の最賃は全国平均874円。年間2千時間働いても170万円にしかなりません。世界的に見ても異常な低さです。

     


    最賃引き上げへ政治決断を

     海外では最賃の引き上げが続いています。韓国では文在寅大統領が就任後2年間で30%近く引き上げ、時給8350ウォン(835円)にしました。韓国の制度では、週40時間働けば8時間分の「週休手当」が支払われますので、最賃は実質千円の水準です。

     日本もせめて今の1・5倍の1300円程度にすれば、非正規労働者の暮らしは今よりもずっとよくなります。それは、就職氷河期で正社員になれず、いまだに非正規から抜け出せないロスジェネたちを救うことにもつながります。10年かけて毎年5%ずつ上げるのです。この程度の上げ幅ならば企業も省力化で対応は十分可能。政治が決断すべきです。

     最賃引き上げは人手不足も解消します。首都圏の牛丼チェーン店の深夜帯は、既に時給1500円前後に上昇しています。高い賃金なら働こうという人はたくさんいます。慌てて外国人労働者を呼ぶのではなく、最賃を思い切って引き上げるべきです。

     

    経営者らの本当の狙い

     政府の経済財政諮問会議の民間議員(新浪剛史サントリーホールディングス社長など)らが5月、消費拡大効果などを訴え、最賃の「5%」引き上げを主張しました。

     おそらく彼らの狙いは、正社員を全て非正規労働者にしてしまおうということだとみています。そうするためには、今の最賃はあまりにも低過ぎる、ということなのでしょう。

     実際、「終身雇用はもう限界」(豊田章男トヨタ自動車社長)、「終身雇用を守っていくには難しい段階に入った」(中西宏明経団連会長・日立製作所会長)など、正規雇用をなくそうという企業トップの発言が相次いでいます。

     

    暮らしと経済よくするために

     民間議員の新浪氏らが最賃引き上げを有効な経済政策だと本気で考えているのか、疑問です。本当に経済をよくしようというならば、消費税率の引き下げを言うべきです。ところが同氏は消費税10%へ予定通りの引き上げを主張するなど、経済を冷やす庶民増税を進めようとしています。

     暮らしと経済をよくするためにも、安定した正規雇用を守りながら、今は最賃の引き上げに全力を傾けることが求められます。