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    検証・菅政権の1年

    中野晃一上智大学教授に聞く

    特権支配から多様性社会へ

     日本学術会議会員候補の任命拒否や、後手後手のコロナ対応、緊急事態宣言下での東京五輪の強行――。菅政権の一年をどう見るか、上智大学の中野晃一教授(政治学)に話を聞きました。

    〈写真〉中野晃一上智大学教授。市民連合、立憲デモクラシーの会呼びかけ人。「私物化される国家」(角川新書)など著書多数


    「やってる感」だけの政権

     菅政権の問題点は何か。中野教授は「安倍政権の時代から続いた『アカウンタビリティー(説明責任)のなさ』です。市民への説明責任を果たさない。果たすつもりもない。全くタガが外れた政治が今も続いています。その点で菅政権は安倍政権より悪くなっています」と話します。

     この姿勢はコロナ対応に表れています。朝令暮改、専門家無視。批判を顧みず、十分な説明はありません。「感染症を甘く見ているのでしょう。ワクチン接種さえ広げれば大丈夫と高をくくっている。より正確な知見や、デルタ株など新たな知見があっても対応しない。『やってる感』を見せていれば、乗り切れると考えているのだろう」

     

    行政ゆがめたツケの末に

     さらに「能力のない首相が2代続いたことで官僚の姿勢が劣化しています。正確な事実、不都合な事実が上に報告されない。聞こえのいいことや首相が好む情報だけが上がり、甘い判断が続く。世論の批判に対しては『誤解している』ぐらいにしか思っていないのでは」と憂えます。

     森友・加計学園の問題など、安倍政権が強めた、官僚への強権支配が、過度な忖度(そんたく)を生み、行政をゆがめました。不十分なコロナ対応は、そのツケなのかもしれません。

     

    こんな政治では日本没落

     今秋には総選挙が行われます。何が問われているのでしょうか。

     中野教授は「日本は今、説明責任のない特権階級による独善的支配が続いています。自民党の2世、3世の世襲議員や、そこに群がる財界、官邸官僚。そうしたお仲間たちが国家に巣食い、食い物にしています。感染対策を怠った結果、医療崩壊が起き、自宅で亡くなる人が相次いでいます。世界3位の経済大国でこんなことが起きているのに、政権が吹き飛ばないのは異様なことです」。

     一部の企業による助成金支給事業の独占や利益の中抜き、森友・加計学園問題にみられる行政の私物化、相次ぐ汚職、カジノ導入を経済政策として進める不見識。「このような政治を続ければ、日本は没落する」と警告します。

     

    憲法理念に立脚した日本を

     ではどうするべきか。同教授は「まず憲法の理念に沿って命や暮らしを優先すること。(社会保障の拡充や最賃引き上げなどの)再分配政策や医療、教育の充実、女性の権利確保や性的少数者(LGBTQ)への差別撤廃など、社会の多様性を大切にすることで活気のある経済をつくることが求められます。一人一人を大切にし、自己実現できるようにすることを、権利の面でも、経済の面でも保障することが、『立憲野党』(立憲民主、共産、社民など)の共通の考え方です」と話します。

     一部の特権階級のための社会か、それとも多様性が生きる社会を選ぶのか。日本社会は今、分岐点にあります。