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    2020年版経労委報告

    経団連、今年も反省なし

    ベア容認も人件費抑制に固執


     経団連は1月21日、今春闘への対応指針「経労委報告」を発表しました。ベアを容認しながらも、依然として「総額人件費抑制策」に固執しています。抑制策が日本経済を冷え込ませたことへの反省はなく、「日本型雇用」の見直しさえ示唆しています。

     

    賃上げは各社の実情に応じて

     経団連は2000年代初め、全従業員の賃金を引き上げるベースアップ(ベア)を否定する姿勢を取り始めました。デフレの下、ベアゼロとなり、その後、「賃金改善」と名目を変えて千円や500円という低額回答が続きました。

     08~09年の世界同時不況以降、再びベアゼロに。賃上げに努めるとした政労使会議を経て14年、ベアが復活。経労委報告はその後、ベア否定の姿勢を修正し容認へとかじを切りました。

     今年は世界経済の減速など不透明感の高まりを指摘したうえで、「社会的な期待も考慮しつつ、賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持に向けて、各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」と主張。基本給については「ベアも選択肢」と昨年に続き容認姿勢を示しました。

     一方で、総額人件費抑制姿勢の維持や、手当や一時金といった月例賃金以外の方法での賃上げを示唆。「横並びによる集団的賃金交渉は実態に合わなくなっている」と春闘否定の姿勢を示しています。

     賃上げに反対できる雰囲気ではないので、渋々つき合っているという思いがぷんぷんと漂ってきます。

     グラフはベア春闘が始まる前の13年から18年までの間に、消費の増加が実質経済成長率の伸びにどの程度貢献したかを示しています。なんと日本だけがマイナス。物価上昇を超える賃上げが行われず、購買力を示す実質賃金が逆に減っているためです。これでは経済が好転するはずがありません。賃上げの水準や規模をさらに高め広げることが必要です。

     日本経済は90年代半ば以降、長らく低迷が続きました。その最大の要因は、国内総生産(GDP)の6割を占める消費の落ち込みであり、賃金水準の低下にあります。日本の企業は人にも設備にも投資をせず、ひたすら利益をため込み続けてきました。経労委報告からは、このことへの反省が今年もみられません。

     

    低賃金の改善こそが急務

     経労委報告は「日本型雇用が転換期を迎えている」とも述べています。日本型とは、長期・終身雇用、毎年昇給する年功賃金を特徴とする制度のことです。

     現行の仕組みが企業側にも利点があると認めながらも、「意欲があり優秀な若年層や高度人材、海外人材」の獲得は難しく、人材流出のリスクも高まると述べています。

     若手の賃金が相対的に低いことを指摘しているのだと思われますが、人工知能(AI)など高度な知見を持つ人材にはふさわしい処遇をすればいいこと。安定雇用や昇給制度を破壊する理由にはなりません。

     それより今問題になっているのは、低賃金、不安定雇用の増加で、この改善こそ急務です。

     表は、年代ごとの賃金の国際比較です。日本は30代の賃金の立ち上がりが弱く、60歳で急激に低下するのが特徴。まずはこの点を改善すべきであることは明らかです。