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    今こそ中小企業は賃上げを

    経済ジャーナリスト・荻原博子さんに聞く

     春闘は中小の交渉が本格化します。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、増税などで中小企業の経営が今後ますます厳しくなる中で、「労使が力を合わせて難局を乗り越えなければならない」と指摘し、そのためにも賃上げが必要と訴えます。


    人より株主優先の悪循環

     「大手企業の中にはかなりもうかっているところもあり、内部留保をしっかり持っています。トヨタなどの大手は賃金を上げないといけません。皆それを見ながら賃上げするのだから。将来の先行き不透明を理由に賃上げしなければ、暮らしはますます苦しくなり、経済もよくなりません」

     荻原さんは、コロナ禍で前年割れとなった今春闘の大手回答に、こう苦言を呈します。

     先進国で唯一、この20年余りで賃金が低下し、デフレが続いた日本。この源流は「小泉改革」に行き着きます。

     「その頃から企業は株主優先の経営になりました。従業員の人件費をコストと見て削減し、利益は膨大な内部留保となり、多くが株主への配当に回りました。株式投資も増えました。アベノミクスで企業の付加価値は42兆円増えましたが、従業員に回ったのは12兆円程度。景気回復の実感が持てないのは当然です」

     コロナ禍を利用した一層のコスト削減も。一気に広がったリモートワークは、企業の経費負担を減らし、残業代の削減にもつながりました。長時間労働が前提の「週休4日」や、副業解禁も体のいいコスト削減。暮らしはどんどん厳しくなる一方です。

     

    働く人のための政治が必要

     「まず大企業寄りの政策をやめることです。企業は十分潤っています。働く人や中小企業のための政策を行うべきです。かつて、企業にとって人は宝でした。今は人が使い捨てにされ、新しい良い商品が出てこなくなりました。企業は新しいことをしないとだめ。そのインセンティブ(動機づけ)の一つが給料です。人を使い捨てにしておいてイノベーション(新機軸の創造)は起こりません」

     正社員のリストラが進んでいます。非正規労働者は今や全体の約4割。「同一労働同一賃金」の法改正がありましたが、手当などの処遇を少し改善するだけです。それも良い方で、正社員の処遇を切り下げ、低い方に合わせる道具として使われることも少なくありません。

     

    力合わせて難局乗り切ろう

     春闘は4月以降、中小企業の交渉が本格化します。日本の労働者の7割が働く中小企業は、経営体力が乏しく、賃上げ原資は豊富ではありません。

     そのうえ、消費税や社会保険料負担が増え、新たに炭素税導入が検討されています。消費税インボイス方式導入(2023年予定)による負担も増えます。中小企業の利益を奪う不公正な取引慣行の是正もまだ道半ばです。

     「中小企業は企業ぐるみで力を合わせないと生き残れない時代です。みんなで手を携えてこの難局を乗り越えなければなりません。そのためにも中小企業経営者は、せめて世間相場ぐらいは賃上げをして、従業員と心を通じ合わせる必要があるでしょう」