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    2021春闘

    経済と生活のために賃上げを

    暮らしと経済研究室主宰               山家悠紀夫さんに聞く


     2021春闘を控えて、経団連は早くも賃上げをけん制しています。第一勧銀総合研究所元専務理事で「暮らしと経済研究室」主宰の山家悠紀夫さんは、日本経済の現在の景気悪化は「三層構造」をなしていると指摘。この20年余りの間に低下した賃金を引き上げることこそが、根本的な解決の処方箋だと強調します。

    〈上層〉新型コロナによる落ち込み

     7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、対前期比で5・3%増(年率換算で23%増)と回復しました。緊急事態宣言が出され大幅に落ち込んだ4~6月期(前期比8・3%減)の反動です。しかし昨年同期比でみるとなお5・7%減です。

     個人消費と輸出は前期比で増加しましたが、設備投資と住宅投資はさらに落ち込んでいます。

     新型コロナ感染拡大の先行きが見えない中、山家さんは「感染症の抑制こそ最大の景気対策。抑え込めば経済は自然と回復する。感染対策に専念し、失業や休業で困窮した人を国がしっかり支援してしのぐことが必要です。GoToキャンペーンのような中途半端な政策を続けていたら、逆に感染も経済もひどくなる」と話します。

     

    〈中層〉消費税率アップの影響

     第2次安倍政権下で景気は2014年3月がピークでした。消費税率を5%から8%に引き上げた同年4月に景気は消費を中心に急激に落ち込みました。それから3年間は消費が増えず、景気も回復しませんでした。

     その後の景気は辛うじて輸出が支えていましたが、米中の貿易摩擦が発生。18年11月に景気は後退局面に入りました(20年7月に政府が認定)。それにもかかわらず、政府は19年10月には消費税率を10%に引き上げました。それで景気は本格的に落ち込みました。

     「政府は景気悪化の原因を新型コロナのせいにしていますが、実はその前に消費税率を引き上げたことが悪化の大きな原因だったのです。コロナ禍による不況がその上にのしかかってきた、ということです。だから有効な景気対策はまず消費税率を5%に戻すことです。欧州諸国は付加価値税(日本の消費税がモデルとした間接税)の税率を軒並み引き下げています。消費減税は給付金より手間もかからず、消費を確実に増やせます」(山家さん)

     

    〈下層〉賃金低下による長期低迷

     根雪のように日本経済を冷やし続けているのが、90年代後半以降の賃金の低下です。消費が低迷しお金が循環しないため、日本経済はこの20年余り、平均して年1%を割り込む超低成長です。2~3%の欧米と比べればその異常さは歴然です。

     その根源は90年代末からの「構造改革」です。竹中平蔵・現パソナ会長らが政権ブレーン入りし、米国を手本とする改革を推進しました。過度な競争政策を進め、非正規労働を増やし始めました。「ベアゼロ春闘」もこの時期からです。景気が良くなっても、賃金が上がらない経済構造をつくりました。

     山家さんは「賃金を上げれば、消費が増え企業の売り上げが増える良い循環が生まれます。欧米並みに賃上げをすれば、日本も2~3%成長する経済になるでしょう。春闘で賃上げを実現することは、日本経済のためでもある。労働組合の皆さんには自信を持って取り組んでほしい」と語ります。