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    建設アスベスト訴訟で初の最高裁判決

    ついに国とメーカーに勝った!


     長年の闘いが国を動かしました。建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや激しい呼吸困難を引き起こす病気になった建設従事者や遺族が、国や建材メーカーを相手に集団訴訟を起こしてから13年。最高裁は5月17日、原告の訴えを大筋で認めました。最高裁判決を受けて国は、原告と「給付金制度(仮)」を作る「基本合意書」に調印。被害者救済に向けて大きく動き出します。一方で、屋外作業者を対象から外すなど、課題も残されました。

     

    国とメーカーの責任を認定

     建設従事者が建材を加工する際、含まれていたアスベストが飛散し、多くの人が吸い込んだ可能性があるといわれます。アスベストの輸入量は高度経済成長期以降急増し1974年には35万トン以上に。国際労働機関(ILO)は86年に使用を禁止する「石綿条約」を採択しますが、日本はその後も輸入を続けました。88年には「第2のピーク」(32万トン)を迎え、製造・使用を全面禁止する06年まで続きました。

     国は75年にアスベスト使用への一定の規制を始めます。しかし、危険性を知りながら建設従事者に周知徹底してこなかった責任について、最高裁は建材メーカーとともに、明確に認めました。弁護団は「ほぼ勝利」と話します。

     

    〈写真〉勝訴の喜びに沸いた最高裁前(5月17日、東京)

     

    被害者を救済する制度創設

     個人事業主や、労働者とみなされない一人親方も救済対象に含めたのは画期的です。判決では「労働者に該当するか否かによって変わるものではない」と踏み込みました。

     この判決を受けて、国は原告と被害者救済に向けた「基本合意書」を結び、調印しました。裁判を起こさなくても行政が被害を認定し、給付金が支払われる制度の創設が盛り込まれています。原告が最初から望んできたもので、最高裁で勝訴し、制度創設まで一気に実現させました。

     

    屋外作業者救済など課題も

     一方、判決は救済を認めた高裁判決を覆して、屋根工など屋外作業者を対象から除外しました。屋外とはいえ顔を近づけて作業するため、アスベストを吸い込む危険性は変わりません。「基本合意書」は最高裁判決を救済対象の前提としているために、給付金制度の対象からも除外されます。制度創設は大きな前進ですが、建材メーカーが制度への出資を拒み続けるなど、課題も残ります。

     被災した原告の7割が亡くなる中、「仲間が認められないのは悔しい」「全面解決までがんばる」と語る原告。全ての被害者が救済される制度に向けて、さらなる運動が求められます。

     

    アスベストとは?

     アスベスト(石綿)は繊維状で加工しやすく、熱や薬品などにも強いため、「奇跡の鉱物」と呼ばれました。電化製品や自動車部品などさまざまな用途があり、日本では輸入量の7割は建設資材として加工・製造、使用されてきました。髪の毛の5千分の1ほどの細さで空気中を舞い、それを吸い込むと激しい呼吸困難や肺がんなど重篤な病気の原因になります。2006年に使用が全面禁止されましたが、アスベストを含んだ建材が使用された建物は多数あります。このため、アスベスト問題は建設従事者に限ったことではないといわれます。