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    〈写真〉畠山澄子さん

    戦争のリアルを見つめよう

    ピースボート共同代表・畠山澄子さんに聞く

     岸田文雄内閣が昨年末、先制攻撃につながる「敵基地攻撃能力」の保有や防衛費の大幅増を国会での議論を経ずに決めました。これに対し、学識者やジャーナリストらでつくる「平和構想提言会議」は昨年12月、「戦争ではなく平和の準備を」と訴える提言を発表。メンバーの1人、ピースボート共同代表の畠山澄子さんに思いを聞きました。


    平和外交が「お花畑」?

     政府が国会での審議を経ないまま、姑息(こそく)なやり方で決めたことに怒りを覚えています。場合によっては、日本から武力攻撃を仕掛けることも辞さないという政策への転換です。このまま進められることに危機感を強めています。

     一方、私たちが「軍事力増強ではなく平和外交を」と主張すると、「安全保障のリアルを見ていない」「お花畑だ」という反論が返ってきます。

     安全保障の「リアル」とは何でしょうか? 私はイタリアに留学した経験や、世界各地を船で巡り、そこに暮らす人々と戦争の加害・被害について学ぶピースボートの活動を通じて、リアルとは「戦争や紛争によって傷つけられる、人々の心、体、人生」だと痛感しています。平和外交が「お花畑」と批判する人たちに、「戦争のリアル」を見て、と言いたい。

     

    〈写真〉岸田政権による改憲と軍拡に抗議する人々(昨年11月30日・都内)

     

     

    戦争は友の人生を壊した

     高校生の時に留学したイタリアの学校には、紛争地出身の留学生がいました。生徒が「戦争を知ろう」という自主研究の企画を立ち上げ、私も関わりました。

     その中で、激しい内戦を経たボスニア・ヘルツェゴビナ出身の同級生に「体験を話して」と促すと、彼女は「戦争がなければお母さんは死ななかった」と一言だけ言って黙り込んでしまいました。私は戦争の被害のひどさを知っているつもりになっていましたが、彼女が言葉にできないほどの苦しみを抱える様子に衝撃を受けました。戦争は私の隣で学ぶ友だちの人生を壊し、変えようのない悲しみを長く強いることだと身に染みたのです。

     軍事力を抜本的に増強する政策への転換は、近隣諸国との緊張を高めます。エスカレートすれば、戦争にもなります。核保有国である米中両国が絡むのは必然で、核戦争に発展する危険性もあります。

     日本は核兵器被害の凄惨(せいさん)さをよく知る国のはず。政府は平和外交に、真剣に、具体的に取り組んでほしいと思います。

     

    戦禍の人々に思いを

     ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、まもなく1年。勝った負けたの戦況報道に目を奪われるのではなく、そこで暮らし、戦禍におびえる人々の姿を想像してほしい。

     日本政府が「反撃」の対象と想定している国にも、人々が暮らしています。安保3文書改定はその人々に向けて「軍事力を増強し、攻撃を仕掛けるぞ」と宣言しているのと同じです。

     日本は大きな分岐点に立っています。「戦争のリアル」を学んで、日本の安全保障のあり方をじっくり考えてみて下さい。「戦争は絶対にさせない」という強い覚悟で平和への準備を始めることが必要です。