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    沈黙の規制緩和

    いま食べ物が危ない!


    安田節子食政策センター・ビジョン21代表

     「日本は粗悪な輸入食品の吹きだまりになってしまった」と、食の安全問題に詳しい安田節子食政策センター・ビジョン21代表が訴えています。

     安田さんによると、日本政府は米国の意を受けて農産物の輸入拡大と食の安全の基準緩和を進めてきました。環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)や日欧経済連携協定(EPA)などの自由貿易協定がこの流れを加速。4月に協議が始まった日米の自由貿易協定(FTA)が追い討ちをかけようとしています。

     私たちの食はいま、どうなっているのでしょうか。


    残留農薬/発がん性、でも基準緩和

     あまり知られていないのが除草剤ラウンドアップの農薬成分グリホサートの残留基準緩和(17年)。発がん性があり、米国ではガンを発症した原告の訴えを受け、企業に賠償を命じる判決が相次ぎます。多くの国が禁止や規制を強化する中、逆行するのが日本です。

     緩和は小麦で6倍、そば粉・ライ麦で150倍という途方もない水準。安田さんは「米国では収穫直前に小麦を枯らして刈り取りを容易にするために散布。農薬は大量に残ります」。

     農薬まみれの小麦を輸入できるように大幅に基準緩和したのだと指摘します。

     

    輸入牛肉/EUと日本向けの二重基準

     牛海綿状脳症(BSE)対策としてあった月齢制限が、今年5月に全廃されました。これにより米国産牛肉を全量輸入可能にしたのです。

     肥育ホルモン剤を使っている米国やオーストラリアの輸入牛肉も要注意です。

    欧州連合(EU)は輸入を禁止。しかし日本向けの米国産やオーストラリア産の牛肉には使われています。

     米国はEU向け輸出には不使用の牛肉、日本向けには使用牛肉と使い分けています。安田さんは「日本もEUのように使用牛肉の輸入を禁止すべきです」と訴えます。

     

    遺伝子組み換え作物/TPP11で輸入促進も

     自然界にない、異種の生物遺伝子を導入して新たな作物をつくるのが遺伝子組み換え(GM)技術です。

     例えば微生物の殺虫たんぱくを作る遺伝子を導入した殺虫性のトウモロコシ。安田さんは「虫が食べて死ぬようなものを人間が食べて本当に大丈夫なのか」。

     TPP11にGM作物の輸入促進条項があることについても、注意が必要です。

     さらに政府は、GM農産物の混入がゼロの場合に限り、「非GM」表示を認めようとしています。現状では混入完全ゼロでの輸入は困難とされ、非GM表示が消えてしまう恐れも。

     

    食品検査/体制不備で素通りの可能性

     輸入食品については残留農薬や有害物質、微生物・GMの混入などの検査が欠かせません。しかし、日本はサンプルを抜き取って通関させるモニタリング検査が主流で、検査率も8%程度。危ない食品が素通りしかねないのです。

     昨年末発効したTPP11では、検査など通関にかかる時間を48時間以内にすることが定められました。輸入は増大する一方なのに食品衛生監視員は不足のままで、検査率はますます低下することが必至。安田さんは「輸入に依存している私たちの食の安全は脅威に直面している」と語ります。