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    パワハラ防止へ実効ある指針を

    抜け穴だらけの厚労省案


     来年6月までに施行される予定のパワハラ防止関連法。実際に防止するための指針づくりが、厚生労働省の労働政策審議会で議論されていますが、10月21日に示された厚労省案は抜け穴だらけだと批判が集まっています。例えば、次のような事例が規制の対象にならない可能性があると指摘されています。

    ケース1/「労働者に問題」とされた

     ある病院の医療事務課長の男性は、上司から「生きる価値がない」などの罵声を繰り返し浴びせられ、精神疾患になりました。病院側は「男性にも問題があった」などと言い訳しています。

     

     →厚労省案では、労働者側に問題行動がある場合、強く注意してもパワハラには該当しない、と記載。裁判では、仮に労働者に問題行動があっても暴言や罵声はパワハラと認定するのが通例だといいます。

     

    ケース2/出向先の仕事は「草むしり」

     大手メーカーの技術者がリストラによる退職勧奨を断り続けたところ、グループ会社に出向させられ、猛暑でも雨でも敷地内の草むしりをさせられました。退職に仕向けるために、過少な仕事をさせる典型的なパワハラとみられます。

     

     →厚労省案では「経営上の理由により一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせること」は、パワハラに該当しない事例としています。

     

    ケース3/職場の外での行き過ぎた言動

     ある会社では終業後に上司が部下を居酒屋などに呼び出し、「だからお前はダメなんだ」などと言って焼き鳥の串で手を刺したり、カラオケのマイクで頭をたたいたりする行為が日常的に行われていました。

     

     →厚労省案では、問題となる言動の規制対象を、あえて「職場内」に限定しており、明らかな抜け穴となっています。

     

    ケース4/客からの被害・迷惑行為

     テーマパークのキャストとして働いていた女性が、客に指を逆に曲げられ、けがをしました。会社は「けがをさせられるなんてプロ失格だ。それぐらいは我慢しなきゃ」と何の対策も打ちませんでした。

     

     →客からのハラスメント対策について、被害者の相談対応や迷惑行為への組織的な対応、被害防止のためのマニュアル作成、研修などを盛り込みましたが、義務ではありません。

    労働者を救済しない厚労省案/日本労働弁護団

     厚労省案について日本労働弁護団は「パワハラの範囲を狭め、労働者の救済を阻害するものだ」と批判し抜本的な修正を求めています。特に加害者に対し、抵抗または拒絶できない関係にあることを要件にしている点を問題視しています。

     今年6月、国際労働機関(ILO)でハラスメント(嫌がらせ)全般を禁止する条約が採択されました。

     職場環境を悪化させ、健康を損ねるパワハラは業務遂行や経営にとっても損失。実効ある指針の策定が求められます。