「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    特信版最新記事

    菅政権が進める

    デジタル庁構想の危うさ

     菅義偉政権の目玉政策の一つがデジタル庁の創設です。日本の行政のデジタル化が遅れているのは事実ですが、政府が前のめりで進めようとしている方向は大丈夫なのでしょうか。自治体問題研究所の岡田知弘理事長(京都橘大学教授)は「地方自治の観点から見たとき、危険な内容を含んでいる」と、警鐘を鳴らしています。

     

    〈写真〉問題点を指摘する岡田知弘・自治体問題研究所理事長


    行政システムを標準化/地方自治ないがしろの恐れ

     菅政権は次期通常国会に関連法を提出し、2021年秋までにデジタル庁を創設するといいます。

     9月の作業部会で菅首相は、25年末を目途に自治体の行政システムを標準化すると言明しました。これは自治体ごとにバラバラな行政のコンピューターシステムやソフトを統合していくということ。推進に当たっては、国が法律を決めて義務化する意向です。

     菅首相はデジタル化を通じて、縦割り行政を是正する考えです。国の省庁の壁を壊すという話だけではありません。自治体に当てはめた場合、各市町村の独自施策を廃止して、「共通施策」に統合する恐れが出てくるといいます。

     この方向について岡田さんはこう指摘します。

     「そもそも自治体の施策やサービスは各地域の個性に合わせてカスタマイズ(独自の仕様変更)されています。憲法で地方自治が保障されている以上、当然です。システム標準化で業務の効率化は図れるかもしれませんが、地方自治がないがしろにされる懸念は拭えません」

     

    危惧される個人情報流出/お粗末な日本の保護水準

     菅政権はデジタル庁構想の中でマイナンバー制度の利活用を進める考えです。 医療や金融を含むさまざまな個人情報とひも付けることで、行政サービスを効率的に受けられるようになるという触れ込みです。

     問題は、日本の個人情報保護のレベルです。岡田さんは「基本的人権の基礎要件である個人情報保護に関する心配があります。日本の保護水準はお粗末すぎるからです」と指摘します。

     例えば内閣府外局の個人情報保護委員会の報告(2019年度)によると、マイナンバーカード関係の個人情報流出・漏えいは年間217件も。マイナンバー以外にも企業や行政からの情報漏えい事件が相次いでいるのです。

     デジタル庁で個人情報保護を強めるならまだしも、「総務省の第32次地方制度調査会答申では、各自治体の個人情報保護条例を、個人データ流通の阻害要因として捉える見方を紹介し、既に内閣官房が動き始めています」(岡田さん)。

     これでは個人情報の「保護」よりも「流通」が重視されかねません。前のめりのデジタル庁構想は将来に禍根を残す恐れ大です。