「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    特信版最新記事

    最低賃金

    大幅引き上げが世界の流れ


     今年の地域別最低賃金が28円を目安に引き上げられることになりました。目安通りであれば、最高額は東京の時給1041円、最低額は820円、全国加重平均は930円となります。「過去最大の引き上げ」と報じられていますが、世界はさらに先を行こうとしています。

     

    EUが引き上げへ指令案

     昨年、欧州連合(EU)は適切な水準の最低賃金を定める仕組みを整備するよう、加盟各国に求める指令案を提起しました。

     欧州では、企業の枠を超え産業ごとに賃金や最低賃金を定める国が多くあります。その産業で働く人の多数を組織する労組と、使用者団体が労働協約を結びます。指令案は、貧困に陥らないための適切な最低賃金を協約で定められるよう、労組の交渉力を強める法的支援を加盟各国に求めています。

     法律で最低賃金を定めている国に対しては、賃金の平均値の5割、中央値の6割の水準への到達を想定しているとみられます。

     産業別の協約で賃金を決めている国は労組が比較的強い国で、最賃の水準は高い傾向にあります。法律で最賃を定めている国は労組が弱いか、力が低下している国が多く、例外はありますが、おおむね水準は低くなっています。EUが想定している目標水準はかなり高めの設定です。

     なぜこのような指令案を出したのか。ヨーロッパの労使関係に詳しい田端博邦東京大学社会科学研究所名誉教授は、賃金・社会保障を削減してきた従来の「緊縮政策」から、「賃金主導の経済成長」へ政策の転換を図っており、その一環として最低賃金を位置付けている――と指摘します。

     

    格差拡大が不満と不信増大

     その背景には、経済のグローバル化に伴う低賃金、不安定雇用の増加が挙げられます。経済的に発展した国や都市に人やモノ、カネが集中し、地方は衰退してきました。一部の富裕層がますます富む一方、懸命に働いても貧困に陥る人が増えました。

     人々の不満や政治不信を吸収した、非民主的で独裁的な政権の登場が、東欧をはじめ各国で相次いでいます。英国のEU離脱や、米国のトランプ前大統領の誕生も同様の現象。こうした現状への強い危機感があると、田端名誉教授は指摘します。

     

    米国は最賃1600円超へ

     米国ではバイデン政権と民主党が、全土に適用される連邦最賃を引き上げる法案成立を目指しています。2025年までに時給7・25ドル(約800円)から15ドル(約1660円)へ段階的に引き上げ、その後は賃金の中央値に連動して引き上げるという内容。現在、30以上の州が連邦最賃を上回り、そのうち3分の2以上が10ドルを超えています。

     欧州と同様、富める者だけが潤う経済のありようの転換を求める声が大きなうねりとなっています。

     

    日本/賃金平均の50%目指すなら最賃は1500円に

     経済協力開発機構(OECD)の統計によると、19年実績で日本の最低賃金は、賃金平均値の38%、中央値の44%。先進国ではかなり低い水準です。

     平均値を50%にするには、このデータでは約1160円になることが必要。ただし、日本の場合は欧米と違い、収入に占める賞与の割合が大きく、賞与として年4カ月分を組み込むと、1500円余りが必要となります。