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    この秋狙われる/「残業代ゼロで過労死多発」

     「働き方改革」についての一連の法案の中に、高度プロフェショナル制度(高プロ制、残業代ゼロ制度)と、企画業務型裁量労働制の拡大が盛り込まれています。「残業ゼロ、過労死ゼロ」どころか、「残業代ゼロ、過労死促進」の恐ろしい法案です。

     

    ●高度プロフェッショナル制度って?

     

     労働時間についてのルールが一切適用されない働かせ方です。今の法律では週40時間、1日8時間を超えて働いてもらうには、(1)労使で協定(36協定)を結ぶ(2)賃金の25%以上の割増手当を支払う――必要があります。深夜や休日の労働にも25~35%以上の割増手当を支払わなければなりません。こうした規制が全くかからなくなるため、日本労働弁護団幹事長の棗一郎弁護士は「1日24時間、年365日働けと命じても罰せられない恐ろしい法案」と警告します。

     対象者は当面、研究開発などの専門職で、「年収1075万円以上」に限定していますが、決して安心はできません。

     過労死等防止対策推進全国センター代表幹事の森岡孝二関西大学名誉教授は「労働者派遣法が1985年に制定されて以降、次々に規制緩和され、派遣労働が広がっていった以上のことが起きる」「経団連が唱えるように、成立後は800万円、さらには400万円に引き下げられるのは必定」と警告しています。日本が参考にする米国の制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)ではマクドナルドの店長も対象になっています。 

     

    ●企画業務型裁量労働制の拡大?

     

     裁量労働制とは、あらかじめ決められた時間だけ働いたとみなす制度。出退勤時刻を含め、労働時間は、働く人の自由に任されるのが原則です。深夜、法定休日の割増手当は支給されますが、決められた時間を超えて働いても残業代は出ません。

     裁量制の問題は、過大な業務やノルマを背負わされると、際限ない長時間労働になること。国の調査では4割近くが「労働時間を短くできると思っていたが、期待通りでない」と答えています。

     法案は、企画・立案・調査・分析などの仕事に適用される企画型裁量労働制の対象者に、「課題解決型提案営業の業務」を加えるという内容。顧客のニーズを聴き、それに見合った商品を企画・立案し、営業・販売する職種だそうです。

     定義が曖昧なので、一般の営業職にも広げられる恐れがあります。

     残業代が増える心配がないため「ノルマを達成するまで帰ってくるな」と、早朝から深夜まで駆けずり回らせることも容易になるでしょう。

     こんな法律ができれば、まともな企業も「ブラック企業」になってしまうかもしれません。

     

    ●時間ではなく成果で決める?

     

     高プロ制は一部メディアで「時間ではなく成果で賃金を支払う制度」などと報じられています。しかし法案は、残業代・休日深夜手当ゼロを明記しているだけで、賃金制度については一切言及していません。この呼称は誤りです。

     「残業代ゼロ制」と呼ばれ廃案に追い込まれた第1次安倍政権時の失敗を繰り返さないために、一部メディアを抱き込んだ「印象操作」の類いといえます。

     

    ●全国過労死を考える家族の会/代表世話人 寺西笑子さん

     

     「『家族の会』には裁量労働によって家族を亡くした遺族からも相談が寄せられています。労働時間の上限をなくす高プロ制は過労死を促進させる働かせ方。『過労死防止法』の流れに逆行しています。容認することはできません。

     一度は政労使合意に応じる構えを見せた連合も、高プロ制を盛り込んだ労働基準法改悪反対に向け、私たちと一緒に闘って欲しいと願っています」