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    経産省が支配する

    日本の未来予想図


     最近、経済産業省が首相官邸と連携して他省庁の政策に口を出す場面が目立っています。「日本再生」「生産性革命」を掲げる安倍政権の方針の具体化です。要は、国民の命や生活、人権に関わる分野までも「もうけ」の対象にするということ。でも、これでいいのでしょうか。

    (1)農業──種子データを企業に譲渡?

     今年4月、種子法が廃止されました。主要作物の品種改良や種の研究・保存などを定めた法律で、都道府県にある農業試験場などの活動を支えてきました。

       今後は、試験場が持つ種子のデータや研究成果が民間に提供されることになります。ところがこの種子を基に民間会社が品種改良を行った場合、「種子全体に特許がかけられ独占されるのでは?」との懸念が出されています。地域に根ざした作物づくりや食料の安定供給への影響も心配です。

       こんな事態を招きかねない種子法廃止を先導したのが、経産省でした。法律が成立した昨年4月時点で、農水省の大臣政務官は2人とも経済産業省出身の議員。種子を担当する食料産業局長も経産省のキャリア官僚。そして、斎藤健大臣も経産省出身です。

     農業団体からは「農水省は経産省に乗っ取られた」という嘆きの声も。農業をもうけの対象としか見ない流れが確実に強まっています。

     

    (2)労働──高プロ制は経産省が主導?

     「経済産業省厚生労働局」とやゆされる厚生労働省。労働政策が経産省主導でつくられていることを皮肉ったネーミングです。

     労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)の発端は、米国産業界の要望でした。当時はホワイトカラーエグゼンプション(WE)という名前でした。

     2002年には経産省産業構造審議会の部会が既存の労働法を批判する形で、WE導入を提言。第1次安倍政権下で頓挫した後も、経産省の外郭団体、経済産業研究所の研究会で理論武装を続けました。

     同研究会の主要メンバーが働き方改革実現会議などに入り、高プロ制を推進したのです。

     労働行政に詳しい、あるジャーナリストは「働き方改革を発案したのは厚労省に出向した経験のある経産省のキャリア官僚だ」と指摘しています。

     

    (3)自治体──住民の命や健康も投資対象

      今年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」に、見慣れない用語がありました。「成果連動型民間委託契約方式」の普及・促進です。

     福祉や医療に関わる公共サービスを、民間と連携して進める新手法で、銀行や企業が事業資金を出すソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)とセットでの導入が想定されています。

     例えば認知症を減らそうという事業の場合、「認知症認定者が減った」などの「成果」に応じて自治体が事業者にお金を払い、資金拠出の銀行は利子などの「リターン」を得る仕組み。

     このSIBについて、海外事例を含めて調査・研究してきたのが経済産業省です。特に商務情報政策局ヘルスケア産業課が医療・福祉分野への導入を推奨し、音頭を取っています。

     公共サービスを投資の対象にするような政策を進めてもいいのでしょうか。

     

    首相周辺も経産省

     森友・加計問題でも、何人もの経産省出身官僚が登場します。筆頭は首相秘書官を務める今井尚哉氏。加計問題で文科省に圧力をかけた張本人とみられています。「加計関係者との面会は首相に報告しなかった」と強弁した元首相秘書官の柳瀬唯夫氏は経産省審議官。安倍昭恵夫人付きだった職員も経産省のノンキャリアでした。