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    発言抄/元徴用工の人権回復こそ/弁護士 宇都宮健児さん

     韓国の徴用工問題を契機に、経済分野を含めて日韓の対立が深まっています。この状態を打開するには、何より当事者の人権回復を優先した取り組みが必要です。

     発端は昨年の韓国大法院(日本の最高裁に相当)判決でした。戦前、徴用工に過酷な労働を強いた新日鉄住金(現日本製鉄)などの日本企業に損害賠償を命じたのです。この判決に対し、日本政府が「1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決済み」「(韓国の裁判所と政府は)国際法違反だ」と横槍を入れ、韓国批判を展開したことで対立が激化しました。

     これまで日本政府は請求権協定によっても個人請求権が消えていないことを認めており、「国際法違反」の主張は当たりません。

     請求権協定によって個人の請求権は消滅せず、裁判を通じて損害賠償を求める行為が正当であることは、法律家の世界では常識です。国同士でどんな取り決めをしようと、個人の権利を奪うことはできないのです。それが、戦後積み重ねられてきた国際法の到達点です。問題を解決するには、当事者が納得できる方法を追求する以外にありません。

     少なくとも、中国人強制連行被害者と西松建設などが和解した方法を参考にすべきです。最高裁の判決では賠償を否定しましたが、企業が自主的に交渉し、謝罪と和解を行いました。

     しかし、それはあくまでも第一歩。ドイツでは戦前の強制動員被害者に対し、政府と企業が共同で「記憶・責任・未来」基金を設立し、166万人の被害回復を図りました。加えて、過ちを繰り返さないため、教育や広報を含む「記憶の継承」事業を行っています。日本も学ぶべきではないでしょうか。

     

    うつのみや・けんじ

    1946年愛媛県生まれ。サラ金などによる多重債務問題の草分け的弁護士。2010年から1年間、日本弁護士連合会会長を務める。