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    戦争の実相どう伝えるか/一橋大学特任教授 吉田裕さん

     アジア・太平洋戦争の体験者がどんどん減っていく中で、戦争の実相をどう伝えていくかが問われています。植民地支配や加害の責任に向き合わない歴史修正主義の流れが強まっているだけに、今は本当に曲がり角なのだと思います。

     求められているのは、加害の歴史を含めて戦場の現実・歴史を伝え、日本人の平和意識を強くしていくことです。

     

    ●兵士の心と体に着目

     

     私は2017年12月に出した『日本軍兵士――アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)で、死にゆく兵士の姿を描きました。戦争末期の「絶望的抗戦期」に大半の兵士が病気と飢えで亡くなった事実についてです。本書では兵士の心と体の状態に焦点を当てました。

     戦争を伝える上で大切なのは、戦場の実態をどれだけ実感を伴って受け止めてもらえるかです。「もしも自分が彼らの立場だったらどうだったろうか」と、自身に置き換えて考えやすくなると思います。

     例えば、虫歯や水虫が治療できずに悪化していく状態や、50キロもの装具を担いで歩く負担など。休暇がなく精神的に疲労した前線のパイロットは、ヒロポン(覚醒剤の一種)を打って出撃していました。これに栄養失調が加わります。

     かつて「24時間働けますか」という栄養剤のコマーシャルがありました。当時の陸海軍の発想も同じで、個は全体に奉仕すべきという考え方です。兵士の命を粗末にする体質は、労働者を使い捨てる昨今のブラック企業と同じです。戦争の未体験者にも「自分事」として捉えてもらえるような手法が必要だと思います。

     

    よしだ・ゆたか

     1954年生まれ。専攻は日本近現代軍事史。「兵士たちの戦後史」など著書多数。今年6月から東京大空襲・戦災資料センター館長も務める