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    発言抄/変化する西成を映画化/映画監督 佐藤零郎さん

     大阪・釜ヶ崎(西成区あいりん地区)を舞台にした映画「月夜釜合戦」を発表しました。古典落語「釜泥」をモチーフに泥棒たちが釜を盗むことで、炊き出しの釜が高騰するという荒唐無稽な物語。日雇い労働者の街である「釜ヶ崎」そのものを開発業者たちが盗もうとしている現在の街づくり批判をも含んでいます。

     大阪府は、2000年代後半から府内の公園などからの野宿者排除の動きを加速させました。釜ヶ崎では、行政と開発業者、御用学者などが結託し、観光客を集める商業地に作り替えようとしています。「日雇い労働者は年老いて不要になった。この土地は交通アクセスも良く、利便性が高いのでこのままにしておくのはもったいない」と。

     戦後の高度経済成長は、日雇い労働者ら不安定就労を余儀なくされた人によって支えられてきました。釜ヶ崎は、そのコミュニティとして機能してきたのに、「クリーンな街にするから出ていけ」と言われるのはおかしい。映画には女性や子どもも登場します。「女性が安心して住める町に」とアピールする再開発推進派が野宿者や日雇い労働者に対立する存在として女性を捉えていることの偽善性を訴えました。

     住人たちは高齢化しているので、福祉を拡充させるのは一つの方法です。でも、大阪府の本音は「『目に見える形での貧困』がなくなればいい」でしょう。公園から野宿者を追い出したくて生活保護受給を働きかけているだけ。本当に個人の生き方を尊重しているようにみえません。そうした姿勢の下で保護を受けても、それまで不安定ながらも自活してきた人たちの自尊心は奪われがち。

     映画の背景にはそうした事実もあると知ってもらえればと思います。

     

    さとう れお

    1981年京都生まれ。佐藤真監督に師事。2009年ドキュメンタリー映画『長居青春酔夢歌』を発表。「月夜釜合戦」は3月より東京で公開開始。