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    川柳にみる戦争

    フリーライター 田村義彦さん


     先日「十七字の戦争―川柳誌から見た太平洋戦争と庶民の暮らし」(かもがわ出版)を刊行しました。これは戦時中、川柳の専門誌に掲載された句の中から約1000句を集め、解説を加えたものです。検閲や用紙統制があり、本音が出せない中で作られた句には、庶民のさまざまな思いが凝縮されています。

     たとえば「夕月に関心のない人通り」(博多日華作)。これは、1942(昭和17)年に詠まれたものです。前年、真珠湾攻撃により太平洋戦争が始まり、人々が月の美しさを愛でる余裕をなくしたことが描写されています。

     「チヤーチルのやうな胡瓜を造るまい」(渡邊みづほ作)といった句もあります。銃後の暮らしについては、色んな人が題材にしており、これは食糧難のため自家菜園で素人農業を始めたであろう人の句。チャーチルは、肥満で丸顔の当時の英国首相です。こうした「笑い」の要素は川柳の大きな魅力の一つです。

     出征中の兵士からの投稿も多く、中には「これが検閲に引っかからなかったの?」と驚かされるような戦争批判の句もありました。

     敗戦のとき、私は4歳でしたが、戦争についてのいやな思い出は残っています。灯火管制で夜も真っ暗にしていなきゃいけないし、空襲は恐ろしかった。今でも高校野球の中継などでサイレンの音を聞くと、空襲警報を思い出して不快になります。食糧難だった記憶はありませんが、父が召集され、幼い子を3人抱えた母はさぞかし苦労したでしょう。

     敗戦後の日本人は「一億総ざんげ」したはずですが、近年、国は「いつか来た道」を進もうとしているようにみえます。戦争のための武器を買い、米国にとって「使い勝手のいい国」になるのは、もうやめてほしいと思います。

     

    たむらよしひこ

    1941(昭和16)年北海道生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。2011年「戦争×文学」(集英社)に収める川柳の選句に携わり、現代川柳資料の収集を開始。