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    こんな「家族」も面白い/映画監督 加納 土さん

     自分の生い立ちを追ったドキュメンタリー「沈没家族」を発表しました。

     

    ★「共同保育」で育った

     

     僕の母は僕が生後10カ月のときに父と離別。夜間の専門学校に通いながら、仕事も育児もしなければ…という状況に置かれた母は「共同保育」を発案します。町中でビラをまき「子守人募集」と呼びかけたところ、「普通」の結婚や就職に興味がないユニークな人たちがこれに応じてくれました。男性も多くいました。母の不在時は、そうした「保育人」がアパートにやってきて、赤ちゃんだった僕の面倒をみてくれたのです。

     その後、僕たち母子は台所やトイレが共同のシェアハウスへ移住。知人の母子家庭3組と暮らし始めます。単身者も数人住んでおり、そこで9歳頃まで過ごしました。アパート時代の保育人も定期的に来て、僕たち子どもと遊んだり、食事したり…にぎやかな日々でした。

     

    ★風通しのよい大家族

     

    「私と土は血がつながってないのに同じ家から、同じ小学校に通ってたんだよね」

    「こういう関係は何ていうんだろう?」

    「『家族』だよ、やっぱり。悪くないよね」

     映画では昔の保育人や同居人にインタビューしました。これは、僕と共に育った2歳年上の「姉」との会話。「風通しのよかった大家族」を僕たちは肯定しています。自分の家族以外のいろんな人が、家の中にいるのは面白いものでした。

     こうした多様な家族のあり方に否定的な人もいるでしょう。映画には父も登場し、母が独断で始めた共同保育への憤りの言葉を口にする場面もあります。観客の反応もさまざまですが、それはいい映画の証。それを励みに今後も映画を撮り続けたいです。

     

    加納土(かのうつち)

    1994年東京都生まれ。『沈没家族』がぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞。今後同作を、京都国際映画祭(10月12日~)に出品予定。