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    被爆者の話を聞いてほしい

    日本被団協事務局次長 和田征子さん

     私は1歳10カ月の時に長崎で被爆しました。まだ赤ん坊だったので当時の記憶はなく、母から聞いた話を被爆証言として語っています。家の隣で毎日、遺体が「ごみ」のように焼かれていくようすを見、ひどいやけどを負った被爆者の傷口を井戸水で洗い続けた母の体験を、多くの人に語り継いでいかなければと、活動しています。

     40年前、東京都大田区の被爆者団体で活動していた頃は、当時の鮮明な記憶を持つ被爆者が多くいて、私は支える側として新聞発行などを担っていました。

     米ニューヨークで開かれた2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の関連行事に参加して、初めて公の場で被爆証言を語りました。その後、語る機会が増える中、私の証言で良いのだろうかとためらっていた時に、被爆者として世界で活動するサーロー節子さんから「あなたは母親から話を聞いている。当時のことを他の人よりも知っている。あなたが語るのよ。(被爆者の中で)若い人が語り継いでくれてうれしい」と励まされ、今に至ります。証言を始めて6年。母の言葉を、母と身近な人々が伝えたかったことを、被爆の実相として話すよう心がけています。

     2017年に核兵器禁止条約が採択されました。寡黙な90歳近い被爆者が「生きていて良かった」と目を潤ませていました。私も同じ思いでした。条約は今年1月に発効しました。日本政府は「核保有国と非保有国の橋渡しをする」と言いますが、批准には後ろ向きで、私には「橋を崩している」ように感じます。

     被爆者の話を聞き、いま核兵器が使われたら自分の身に何が起こるのかを考えてほしい。核兵器のない世界をつくるために、一緒に行動してほしい。そう願っています。

     

    わだ・まさこ

     1943年長崎生まれ。2015年より日本原水爆被害者団体協議会事務局次長、神奈川県原爆被災者の会副会長、横浜市原爆被災者の会会長。