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    発言抄/酪農一家の20年を映画化/映画監督 遠藤隆さん

     テレビ岩手で40年にわたり、ドキュメンタリー製作に携わってきました。

     現在公開中の映画「山懐に抱かれて」は20年以上、継続取材してきた岩手県田野畑村の酪農家、吉塚公雄さん一家のお話です。

     公雄さんは、約50年前、東京農業大学で「山地酪農」を学び、これを実践しようと岩手県へ移住しました。元々は千葉県出身で、同県出身の奥さんと岩手で結婚し、7人の子どもに恵まれました。

     山地酪農とは、化学肥料などに頼らず、山地で自由に牛を放牧させる循環型の酪農法です。収益が上がるまでに長い年月を要し、国内ではわずか数軒しか営んでいません。

     一家に初めて出会ったのは1994年。平成6年でしたが、「昭和初期のころの暮らしのようだ」と驚きました。大家族でプレハブ小屋に住んでいたし、子どもたちは穴の空いた洋服を着ていました。でも、とても正直で明るい人たちだった。貧乏だけど、それを恥じるところがない。そこに惹かれました。

     吉塚牧場の牛乳は今では「田野畑山地酪農牛乳」として販売され、成長した子どもたちがチーズ販売を行うなど事業を拡大しています。自分の理想とする山地酪農を子に継いでほしいという思いが強く、公雄さんは彼らと衝突することもある。

     カメラの回っていないところで、私は何度も喧嘩の仲裁に入ったことがあります。すごいと思うのは、「他人は黙ってろ」と彼が言わないこと。他人の私と徹底的に議論するのです。こうした人間性にはスタッフたちも魅了されました。真正面から人と向き合うことの大切さを感じとっていただければと思います。

     

    えんどうたかし

    1956年、東京都生まれ。81年テレビ岩手入社、報道部配属。92年「コメ自由化は決まったのか」でギャラクシー選奨、農業ジャーナリスト賞受賞。