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    (61)二重橋ビル、知られざる攻防

     2018年11月21日、丸の内二重橋ビルの竣工式が執り行われた。3000人が働いた工事で、知られざるドラマがあった。発端は同年7月。千葉土建に寄せられた組合員からの相談だった。二重橋ビルの工事で、仲間が元請・大成建設の現場責任者にパワハラを受けている現場を目撃し、見過ごせないと連絡したのだ。

     猛暑だった今年の夏。休憩所にはクーラーもなく40度を超えて弁当が腐る。水を買うと「さぼっている」と朝礼でつるし上げられる。トイレが足りず、現場の隅で用を足す――。スーパーゼネコンの現場とは思えない状況下、17年8月には重機落下で三人が亡くなる事故も起きたが「下請のせい」にされていた。

     今現場に行かなければ、誰かが命を落とす。そう考えた千葉土建は、相談の数日後、首都圏の仲間とともに現場前で宣伝を展開。現場の窓にへばりつくように宣伝に見入る人々。熱中症対策飲料や塩飴などを配る宣伝隊に、窮状の訴えが労働者から相次いだ。

     ファックスや匿名の電話での訴えも続くなか、組合は「丸の内3―2」(二重橋ビル)の情報交流ツイッターを開設。現場の情報が組合に届き、取り組みを現場に返す回路になる。「大成建設にとっては、たった一人の作業員かもしれない。でも私にとっては、代わりのいないたった一人のお父さんなんです」。労働者の娘さんからの声も寄せられた。

     組合の通報で労働基準監督署は臨検を実施。国土交通省も調査に乗り出した。寄せられた声をもとに組合は大成と交渉。結果を現場に返すと反響があり、次につなげた。

     施主である東商会頭の耳にも情報が届くなか大成も慌て、社長が現場を視察。「そこで山が動きました」と千葉土建の海老原秀典中央常任執行委員は振り返る。休憩所にはクーラーや冷水器が設置され、監督の多くも態度を改めた。

     パワハラがはびこる現場は密室に似て、世間で許されない不条理がまかり通る。

     二重橋ビル工事では、密室から発せられた一人の声を受け止めて組合が動き、ツイッターも使いながら不条理を世間の目にさらし、現場を変えた。

     「働く者が声を上げることが大事で、その声を大きくするのが組合の役割です」と海老原さん。職場を変え命を守る力が、組合にはある。