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    経済ニュースの裏側/(65)水は商品か人権か

     財務省が首相のお友達に、国有地を8億円引きで叩き売り、関連する公文書まで改ざんした森友学園問題で、3月29日、検察審査会は「不起訴不当」の議決を公表した。

     公共財の私物化と不正隠蔽という点で、水道民営化は森友問題に似ている。ただし、水道の方が桁違いに大きい。先日、水道民営化をめぐる「綱引き」を描いたギリシアのドキュメンタリー映画『最後の一滴まで』を見、上映後のトークセッションを聞きながら、そんなことを思った。

     ポルトガル北部のバルセロス市は、水使用量が約束を下回ったら損失を補償する契約にもとづき、多国籍企業から1億7200万ユーロ(約215億円)を請求され、市長は頭を抱える。

     「利益は企業、リスクは住民に」。不条理な契約は秘密のベールで守られる。契約を公開させるのに、ベルリン市民は憲法裁判所(最高裁)まで争った(結果は後述)。

     他人事ではない。昨年12月に成立した改正水道法で「官民連携」が導入されたからだ。お勧めは、施設は自治体が持ったまま「水道の運営権」を民間事業者に丸ごと売るコンセッション方式だ。

     政府は「コスト削減になる」とするが、上映後のトークで弁護士の三雲崇正さんは、イギリスでは配当・金利で、水道料金から年5000億円が投資家の懐に吸い込まれたという衝撃の事実を紹介した。

     水道民営化の旗を振る内閣府の民間資金等活用事業推進室には、フランスの水企業・ベオリア社から社員が送り込まれていた。財務局と森友どころではない。政府と水企業はグルになり、公共財売り渡し計画を練っていたのだ。

     蛇口をひねれば飲める水が出てくる日本の水道は、安全安心のレベルが高い。だが、人員削減、施設老朽化に収入減と黄信号が灯り、水企業はそこに付け込もうとする。

     全水道の辻谷貴文書記次長は呼びかけた。「水道がどうなるか、これからは地域が舞台。蛇口の向こうのことをみんなで考え、ピンチをチャンスに変えようじゃないですか」

     ドイツの憲法裁判所も「水は人権であり、住民は契約を知る必要がある」と裁定し、契約は公開。ベルリンの水道は再公営化された。水のことを知る必要、それは私たちの命と暮らしにも切実である。