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    (87)森発言を生む土壌

     いくら何でも、これはない。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は2月3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視発言をした。

     森氏は、「女性理事4割は、これは文科省がうるさく言うんでね」と女性理事を増やす目標に言及。「女性は……誰か1人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それでみんな発言される」とも語った(引用は毎日新聞ネット版2月4日0時11分)。

     筆者は仕事柄、会議やシンポジウム、座談会で司会をすることがあるので、時間管理には気をつかう。だが、女性ばかりが長く話す事実はない。男でも女でも長く話す人もいれば、言葉少ない人もいる。「女性の話は長い」と決めつけるのは、一人

    一人の意見の内容に耳を傾けられず一くくりにして切り捨てる、こけむした差別意識の吐露だろう。

     JOCが発行した「JOCの進めるオリンピック・ムーブメント」という冊子には、「人種、宗教、政治、性、その他の理由による国または個人に対する差別はいかなる形態であれ、オリンピック・ムーブメントとは相容れない」と反差別の理念がうたわれ、JOCは「スポーツの場での差別や暴力に反対する断固とした行動をとる」と記されている。森氏に対し、JOCは「断固とした行動」をとるべきだろう。

     そもそも、大切なことなら自由に意見を交わし、時間をかけて話し合うのが当たり前。会議に時間がかかったり、みんなが発言すること自体を否定的に捉える感覚もわからない。と思っていたら、フラワーデモを呼びかけた作家の北原みのりさんが「昼間の会議では発言せず、女性のいない夜の会食で重要な決定をしてしまうような男性中心の文化が、コロナ禍での政治家の銀座通いなどで浮き彫りになっている。今回の森氏の発言はそうした文化を象徴している」とコメントしている(前出・毎日新聞ネット版)のを読んで、耳に痛みを覚えつつ、なるほどと思った。

     多様性をもったメンバーが集まって、個性を生かしながら力を合わせることは、スポーツでもビジネスでも不可欠だ。森発言を生む土壌を今こそ変えなければ、たぶん未来はない。どんな組織、団体であっても。