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    経済ニュースの裏側

    (72)ソフトバンク決算が示したギグエコノミーの現実

     目を見開くべきは誰なのか。

     運営会社が雇用責任を背負わぬまま運転手に自家用車で旅客を運ばせるライドシェア大手ウーバーは、携帯電話会社から投資会社に姿を変えたソフトバンクグループ(SBG)の重要投資先だ。5月9日、SBGの孫正義会長兼社長はライドシェアが日本で規制されていることについて、「規制当局や政治家は世界で何が起こっているのか、眼を見開いて判断をしてほしい」と批判、規制緩和を訴えた。

     その翌日、ウーバーは米国で上場する。超大型上場と騒がれたが株価は下落し、公開価格45ドルから11月6日現在、約27ドルまで落ちた。

     SBGが採用する国際会計基準では、非上場株式の評価が上がったことを利益計上できる。市場価格のない非上場株式の評価は、将来の事業計画にもとづくキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算する。金融工学的時価と呼ばれるが、所詮「見込み」に過ぎない。架空の見込みを利益に付けられる会計基準は問題含みだが、その国際基準でもウーバー株の下落は損失計上せざるを得ない。シェアオフィス「ウィーワーク」も、同じ構図だ。

     架空の見込みが吹っ飛んだ結果、SBGが11月6日に発表した19年9月中間決算では、営業損益が155億円の赤字に沈んだ。決算説明会で孫氏は、それでも、「決算はボロボロ、でも株主価値は至上最大。私から見れば大勢にまったく異常なし」と主張。ウーバーに関わる質問には、ネットの黎明期を引き合いに、「架空だと思われた世界が実になり、実だと思われた世界が滅びる」とも力説した。

     ライドシェアに象徴されるギグエコノミー(ネットを経由した細切れ仕事)を描いたケン・ローチ監督の最新作「家族を想うとき」(12月13日から全国でロードショー)で、主人公の妻は家族を追い詰める宅配会社に「人を何だと? 命の問題よ」と叫ぶ。

     スクリーンの中の誇張ではない。ウーバー運転手の中位時給は米国で400円を割り、1年離職率は50%。運転手の自殺さえ相次ぐのだから。

     現場で汗する担い手がまともに暮らせないビジネスに明日はない。人を大切にする事業に変われなければ、投資会社の決算に盛られた架空のメッキもはげ落ちていくだろう。