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    経済ニュースの裏側

    (89)五輪組織委の残念な体質

     不祥事を暴かれた問題企業のようなぶざまな対応を、誰も止める人がいなかったのか。

     「週刊文春」は4月1日発売号で「白鵬、海老蔵、後援者…森・菅・小池の五輪開会式〃口利きリスト〃」と題する記事を掲載。開会式責任者だった演出振付家MIKIKO氏のチームに政治家たちが出演者に関する要求を次々繰り出し、彼女が圧力をはねつけると降ろされた。開会式予算130億円はもう10億円しか残っていない、などと報じた。

     東京五輪の予算額は膨張の一途で現在1兆6440億円。そのうち1兆円近くは国と東京都が出す税金である。税金を使った公的行事のあり方や政治家関与の報道に高い公益性があるのは言うまでもない。

     それに対し東京五輪組織委員会は、発行元の文芸春秋に抗議し、掲載誌の回収、販売中止、ネット記事の削除を要求した。組織委の橋本聖子会長は4月2日の記者会見で「報道の自由を制限するということでは全くない。ただ、280ページに及ぶ内部資料が入手されており、組織委の秘密情報を意図的に拡散し、業務を妨害したと判断した」と説明。著作権法違反や業務妨害にもあたるという(「朝日新聞」4月3日付)。

     内部資料を基にした報道が著作権法違反なら、調査報道は大きく制約される。税金の使い道に関わる情報はできる限り透明性を高めるべきで、何でもかんでも秘密にし、納税者の検証を阻む姿勢こそ問題だろう。著作権法も、報道目的なら「正当な範囲内」での著作物利用を認めている。

     毎日新聞も4月1日付で、東京オリンピックの会場運営を担う企業への委託費の積算に関わる組織委内部資料を基に、人件費単価が1人1日当たり最高30万円(「運営統括」の場合)と報じた。人件費単価は委託額の積算に使うものだが、驚くほど高い。組織委は「毎日」報道にも、「抗議」で応じた。「招致が金で買われたのではないか」という疑惑もくすぶる。

     組織委の森喜朗会長(当時)が日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議会で女性蔑視発言をした際、参加者らは笑って見過ごした。今回も、報道の自由に挑戦するかのような「抗議」を誰も止められなかった。開会式だけではない。組織委の隠蔽(いんぺい)体質こそが、問われている。