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    経済ニュースの裏側/(74)ゴーン逃亡と人質司法

     楽器の箱に身を潜めた。外交官も絡んでいる。映画化の予定もあった……。

     情報が錯綜し、推理もさまざま。金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などで起訴され保釈中だった元日産会長カルロス・ゴーン被告のベイルート脱出は、サスペンス映画の一幕のようだ。

     ゴーン氏(推定無罪原則にもとづき、本記事では氏を付ける)はレバノンから、「日本の司法制度は……有罪が前提で、差別が横行し、基本的人権が否定されています」とし、「私は正義から逃げたわけではありません。不正と政治的な迫害から逃げたのです」と主張した。

     日産再建の功労者とはいえ、多くの労働者のクビを切ってきた大富豪の逃亡劇に共感は抱けないが、海外では好意的受け止めも目立つ。独裁国で捕まった日本人が命からがら脱出、帰国したのを歓迎するようなものなのだろうか。

     ゴーン氏が起訴された事件は、日産の経営権争いの一方(西川廣人元社長らの側)に東京地検特捜部が加担し、経営トップを形式犯で逮捕、起訴する特異な展開をたどった。西川氏も不正発覚で辞任に追い込まれており、「西川氏らが正義でゴーンが悪」との図式はすでに崩れている。

     「罪」を認めない限り市民が安易に自由を奪われるという人質司法は、何もゴーン氏に限った話ではない。

     昨年12月、沖縄県内の米軍北部訓練場に侵入したとして刑事特別法違反容疑で逮捕された6人の市民に対し、那覇地裁は勾留を認めながら、理由を説明する手続きを先延ばしした。

    勾留理由の開示は憲法にもとづく市民の権利で、請求から5日以内に公開法廷で行う。「やむを得ない事情」があれば延ばせるが、那覇地裁は「事情」の説明もしない。勾留は安易に認め、理由説明は後回し。

     自由のはく奪を軽く見る態度に、弁護士は「恐ろしい判断だ」と語った(沖縄タイムス19年12月30日付)。

     ゴーン氏逃亡で検察関係者からは「簡単に保釈を認めるな」との声が挙がるが、本末転倒もはなはだしい。人質司法の闇は世界に知れ渡った。本気で改革しない限り、批判は収まるまい。公正な刑事司法への改革はグローバル化する企業にもプラスなはずだ。