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    (84)敗訴原告のことばのチカラ

     年に何度か、ゲスト講師として大学で授業をしている。10月15日は「『半沢直樹』と『ハケンの品格』に見る日本型雇用の課題」がテーマだった。

     「ハケンの品格」は篠原涼子演じる派遣労働者が主役のドラマだ。派遣先は食品商社。残業も休日出勤もしないが、高いスキルで次々に難題を解決。「お時給以上」働くが、契約期間の3カ月が過ぎると去っていく。

     派遣社員へのセクハラや社員食堂での食事代の格差も描いたドラマを素材に、雇用形態にもとづく差別も考える授業の直前、大阪医科大事件とメトロコマース事件の最高裁判決が出た。労働契約法20条(現在はパート有期法8条)に拠って契約社員やアルバイトが格差是正を求めた裁判である。

     正社員と肩を並べ長く働いてきた原告たちに、1円の賞与も退職金も払わなくていいという不条理な内容だった。だが、これも雇用社会の一面ではある。ならば直視し、考えてもらおう。

     授業では、判決要旨、識者コメントと共に原告の声を紹介し、「もしあなたが契約社員で、正社員と同じ仕事なのに大きな格差があったらどうしますか」とZoomの画面越しに問いかけた。

     転職・退職という回答がもっとも多いのは予想通りだったが、14%の学生が「声を上げる」、10%が「裁判を起こす」「組合に(で)相談、交渉する」とレポートに書いた。

     勝てないかもしれない。それでも裁判を起こす理由に、大阪医科大事件原告の判決直後の「判例をどんどん積み重ねることで、少しずつ前進することもあると思う」ということばを引いた学生もいた。

     10月21日、レイバーネットTVに出演したメトロコマース事件原告の後呂良子さんはこう語った。

     「私の人生で裁判を闘うなんて思ってもみなかった。提訴時には浸透していなかったが、今回、裁判のことが新聞全紙に初めて載り世間に浸透してきた。これからだな、と思いました」

     差別の壁は高く厚いが、敗訴した原告たちの言葉は学生にも世間にも響いている。

     均等待遇には一人ひとりの尊厳がかかっている。それは司法改革の原点でもあった。たくさんの涙と汗の先に、職場も司法もきっと変わる。