ILO勧告「順守しなくてよい」 JAL役員が暴論/国際ルール無視に抗議の声
「国際労働機関(ILO)勧告を忖度(そんたく)するかは会社の判断」と、国際ルールを無視する、日本航空(JAL)役員などの発言が問題となっている。
発言があったのは4月19日。JAL被解雇者労組(JHU)が同社に165人の不当解雇の解決を求め、ILOの「優先的再雇用勧告」(166号)による原職復帰や早期解決に向けた要求(解決金)の実現を迫った。
会社側は労務担当部長が雇用対応で「勧告に合致しているかは分からない」と発言。同代理人の弁護士は「ILO勧告は拘束力がなく、忖度するか、再雇用に反映させるかは会社の判断」と述べた。勧告は順守しなくてもよいという暴論だ。組合は「勧告に従っていない。回答拒否と受け取る」と強く抗議した。
ILO166号勧告は、経済的理由などで解雇された人は、再雇用の優先権を与えられると明記。1982年に圧倒的多数の賛成で採択され、日本の政府、使用者、労働者の代表も賛成した。
JHUは、会社側の発言に対して4月28日、JALの不当労働行為事件を調査している東京都労働委員会で、山口宏弥委員長が抗議。「JALのコンプライアンス(法令順守)と社会的責任が問われる。反社会的発言に改めて抗議する」と怒りを表明した。
争議支援者からは「日本はILOの常任理事国であり、勧告を守る義務がないというのは大問題だ」などの意見も出されている。
JALが165人(パイロット81人、客室乗務員84人)を整理解雇してから11年。それ以降、パイロット397人、客室乗務員6205人を採用しながら、被解雇者の原職復帰はゼロ。来年度はパイロット80人、客室乗務員100人の採用も発表している。
ILOはこれまで4度も解決を勧告。特に2次勧告(13年10月)では「経済的理由による解雇後の再雇用(職場復帰)協議の確実な実行」として166号勧告の履行を求めている。
会社側の発言はILOの冒涜(ぼうとく)であり、JAL労使だけでなく、国土交通省や厚生労働省など政府や労働界、政党、経団連にとっても看過できない暴論といえる。
JALは16年に最高裁判決で憲法、労組法違反の不当労働行為と断罪されたが、今も未解決。「会社の方針」として、憲法やILO勧告を守らないことは、脱法行為ともなろう。
JAL165人の解雇撤回争議は組合つぶし阻止と人権、空の安全を守る闘争である。2月には争議の早期全面解決をめざす東京集会が開かれ、全国106団体、各界425人が賛同。5月からは関東キャラバンを展開し、支援の輪を広げる。(ジャーナリスト・鹿田勝一)