「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    2017年

    4月

    18日

    〈フランスメーデー〉/大統領選真っただ中で開催/顔ぶれ次第では緊急大行進も

     極右ナショナリズムの台頭、世界的戦争の脅威などで戦後最大の岐路に立つフランスは、大統領選挙(第1回投票4月23日、決戦投票5月7日)の真っただ中でメーデーを迎えようとしている。決選投票の顔ぶれ次第では、緊急大行進が行われる可能性もある。

     今回の大統領選に出馬しているのは11人。有力候補は4人に絞られてきたが、迷っている有権者も多く、行方はかつてなく混沌(こんとん)としている。

     

    ●極右ルペンが高支持率

     

     大激戦の首位を争うのは2人。

     一人は極右「国民戦線」のマリーヌ・ルペン(4月14日現在支持率22%)で、トランプ米大統領の当選を祝い、ムスリムをはじめとする外国人排斥、国境閉鎖、欧州連合(EU)脱退を叫ぶナショナリストだ。テロや難民への恐怖を最大限利用する一方、左翼用語も巧みに盗みながら民衆の不満を吸収してきた。

     もう一人は、元銀行マンのエマニュエル・マクロン(同22%)。オランド現大統領に経済相に抜てきされたが、恩人の超不人気をみて独自の政治運動「アン・マルシュ」(前進)を旗揚げした野心家だ。「右でも左でもなく」を合言葉に幅広い票を集める戦略だが、企業減税や富裕税の一部廃止、12万人の公務員削減などを打ち出している。

     彼らを追うのは2人だ。

     一人はサルコジ元大統領の下で首相を務めた、共和党(保守)のフランソワ・フィヨン(同19%)で、公務員50万人削減など、サッチャー元英首相ばりの強硬路線を打ち出した。だが妻子を勤務実態のない公設秘書に据えて膨大な給与を得ていた疑惑が浮上し、公金横領容疑で捜査対象に。本人は合法と居直っているが、モラルを問われて支持率は急降下した。

    ●改悪労働法撤廃も課題

     

     対照的に急浮上中なのが、「不服従のフランス」を立ち上げたジャン=リュック・メランション(同20%)。元社会党左派の雄弁家で、前回大統領選では共産党とともに「左翼戦線」を代表した左翼の人気キャラクターだ。

     こちらは大企業と富裕者への課税強化、最低賃金16%アップ、昨年強行された「労働法」(エル・コムリ法)撤廃と労働者の権利拡大、60歳年金制復活、脱原発、エコロジー大転換による雇用創出、NATO離脱、国民に大統領や議員の罷免権を与える第6共和政樹立などを掲げ、世界戦争に巻き込まれない平和と独立のフランス、金融主導ではない連帯の欧州を主張。闘う労働者や市民を十万人以上の規模で集めて、街頭大行進や青空大集会を成功させている。

     ナショナリズム旋風や戦争という最悪の近未来シナリオも頭に入れてか、支持者たちが「レジスタンス!レジスタンス!」の合言葉を叫んでいるのも特徴だ。

     一方、苦戦しているのは社会党のブノワ・アモン。「労働法」強行の張本人マニュエル・ヴァルス前首相を予備選で破った社会党左派で、週32時間労働制実現、第6共和政樹立、ベーシックインカム導入などを掲げる。だが社会党右派がマクロンに乗り換える裏切りが出ている。

     こうした中、労働運動の各ナショナルセンターは、情勢に機敏に対応してゆく方針で、統一メーデー行進をするかどうかも今後の推移をみて決める。ただ「労働法」撤廃を要求し続け、極右反対の闘争も明確にしている労働総同盟(CGT)は、「極右が決選投票に進出すれば、緊急デモを呼び掛ける可能性も十分にある」という。

     逆に極右を4月に阻止すれば、いつもどおりメーデー名物のスズラン売りが街角を彩り、地域ごとのメーデー行進がフランス中に溢れるだろう。フランスらしい民主主義の凱旋(がいせん)となる。(フランス在住ジャーナリスト・著作家 山本三春)