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    〈雇用類似の現場から〉(4)/「雇用化」目指し組合結成/ヤマハ英語教室の講師/ジャーナリスト 北 健一

     「あなたは労働者ではありません」

     2018年5月、ヤマハ英語教室講師のAさんは、耳を疑った。

     働いているのに労働者じゃない? どういうことだろう。壁に貼ってあるポスターを指さし、Aさんは言った。「『どなたでもご相談下さい』って書いてあるじゃないですか」。労働局の職員は「あなたの来るところじゃないんです」と返した。

     子どもたちに英語を教える仕事は、やりがいがある。でも収入は不安定で社会保険も有給休暇もなく、たくさんの優秀な講師が去っていった。好きな仕事を続けるために相談に来たのに、まるで門前払いされたかのようだった。

     

    ●初体験の組合活動

     

     どの教室で教えるかは会社(ヤマハ・ミュージック・ジャパン)が指定し、研修を受け、指定された教具、教材を使い、決められたカリキュラム通りに教える。

     「おかしいよね」「おかしいよ」。労働局の対応を聞いた講師たちは話し合った。会社に質問状を送ったが、納得のいく答えは得られない。講師の一人が、長く労働問題を研究してきた森岡孝二さん(関西大名誉教授、故人)に出会う。森岡さんは彼女の手を取り言った。「よく我慢してきましたね」

     森岡さんの紹介で、講師たちは大阪の岩城譲、清水亮宏両弁護士やNPO法人働き方ASU‐NETの副代表理事・川西玲子さんに出会う。「まったくピヨピヨで組合が何かもわからなかった」(講師のSさん)ところから学習会を重ね、18年12月に14人で組合結成。会社に要求書を出した。

     緊張で固まってしまった初の団交。「今の委任契約で問題はありません」。会社の回答も硬かった。

     

    ●行動すれば変わる

     

     だが朝日新聞が組合結成を報じると全国の講師から連絡があり、福島から沖縄まで仲間は約70人に増えた。団交のたび、議事録をメーリングリストで共有。次々と激励や意見が書き込まれる。

     団交を重ねるうち、会社の姿勢も変わってきた。委員長に選ばれたSさんは10月30日、「雇用によらない働き方」を考えるASU‐NETの集会で「雇用化の実現に向け、良い感触を得ています」と手応えを明かし、笑顔で語った。

     「組合を作って分かりました。声を出せば助けてくれる人がいて、行動すれば何かが変わる。教えている子どもたちが将来、無理な働き方を強いられないためにも頑張りたいと思います」