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    〈インタビュー〉独法化後初めてスト構える/鈴木仁志全医労書記長に聞く

     国立病院機構の病院などの職員でつくる全医労は今春、2004年の独立行政法人化以降初めてストライキを配置する。コロナ患者の受け入れなど国の政策医療を担いながら、看護師などの賃金が平均より低く抑えられていることへの現場の強い不満が背景にある。鈴木仁志書記長に聞いた。

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     独法化後では初めてストを配置する。その理由の一つは、人員不足の中、コロナ対応の医療を懸命に支えてきたのに、この3年間賃上げも増員も全く行われていないということだ。

     国立病院機構の病院は全国に140施設あり、そのうちの約8割でコロナ感染患者を受け入れてきた。クラスターが発生した他の病院への職員派遣にも多数応じている。大都市の臨時医療施設の運営も担い、国の政策医療を支えてきた。 

     しかしこの間、職員への賃上げは全く行われていない。生活関連費の高騰で実質賃金は確実に減っている。国の処遇改善交付金は一部の病院や職種に限られ、不十分。コロナ禍で人員が逼迫(ひっぱく)しても増員は全くない。生活を犠牲にして懸命に医療を支えているのに、処遇が働きに見合っていない、というのが現場の強い思いだ。

     国立病院機構は、15年に「非公務員型」に移行して以後、診療報酬改定などによって業績が悪化。国家公務員が人事院勧告でプラス改定される中、機構の賃金改定は見送られ続けた。

     看護師の平均年間給与額は、国家公務員を100として98・2と低く、基本給は日本医労連の平均より低い。ベテラン層ほど平均を大きく下回る。22年度の賃金改定でも、機構は人勧を下回る水準を提案しており、改定幅は10年で頭打ち〈国の俸給表・医療職(三)2級41号俸(24万5600円)〉だ。上限額は基本給額で国家公務員水準を下回る。

     研修が必要な新人もフル稼働して、ようやく職場が回るという人員体制のため、近年は離職が増えた。採用も難航している。今春の看護師採用は目標の6~7割しか確保できていないと聞く。施設によっては減床や規模の縮小を迫られる事態となっている。

     

    ●欠員招く低賃金

     

     非常勤職員の賃上げは、もう一つの差し迫った課題だ。非常勤職員は、04年度に職員全体の8・4%だったのが、22年度には15・1%にほぼ倍増した。今ではその存在なしに病院運営は成り立たない。

     しかし、賃金は初任給を時給換算した水準に抑えられている。看護助手の非常勤職員の時給は910~1220円。何年働いても賃金の経験加算はない。仕事を教える側も教えられる側も同じ賃金という信じがたい状況が続いている。

     国家資格が必要な看護師でも時給は1240~1650円。派遣会社が派遣する看護師が時給4千円程度であることをみれば、いかに世間とかけ離れているのかが分かるかと思う。

     こんな低賃金で、あえてコロナ患者受け入れ病院で働きたいという人がどれだけいるのか。筋ジストロフィーや重症心身障害の患者を介助する介護福祉士などの介護職は、機構の82%もの病院で欠員状態となっている。

     欠員が生じると職員の負担は増え、十分な医療サービスを提供できなくなる。抜本的な改善が必要だ。

     

    ●広く社会にアピール

     

     こうした状況を背景に、22年度の賃金改定交渉がスト権行使の対象となる。(つづく)