「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    2016年

    6月

    23日

    パワハラ配転で従業員を支配/東洋食品元社員が告発(上)

     惣菜の製造販売を行う東洋食品株式会社(福岡県北九州市)で、1年4カ月の間に5回の配転・異動命令を受けたうえ解雇された元社員の澤山秀之さん(50)が、解雇撤回を求め裁判に立ち上がった。同社では従業員への不払い残業、会計操作、在庫隠しなどが横行し、従わない社員に懲罰的な配転を強要しているという。澤山さんは「多くの従業員がつらい目にあっている。悪質な労働環境を社会的に訴えたい」と話している。

     同社はスーパーマーケット内のスペースで惣菜の製造販売を行っている。西日本を中心に全国で約250店舗を展開し、取引先にはイオンやコープ、エレナ、サンリブなど大手スーパーが並ぶ。2012年時点の売り上げは147億円、従業員は3251人(ホームページより)だ。

     澤山さんは別の食品会社で26年勤めた後、10年に入社。ベテランの営業社員として多いときは20店舗以上を担当してきた。

     

    ●モノ言う社員は「配転」

     

     配転の強要が始まったのは、13年12月に会社の上層部が変わってからだ。その2カ月程前にパワハラの事実を訴えていた澤山さんは「標的」となる。

     当時会社からは、引き続き大分エリアを任せるので事業所の近くへ一家で引っ越してほしいと要望され、妻は仕事を辞めることになった。ところが急に広島へ配転命令を受け、大分の話もなくなった。同社ではそれまで、本人の同意なく転勤を強いることはなかったという。家族の人生も振り回される命令を受けるべきか迷った末、この時は従った。

     しかしその後15年4月までに、広島→山口→福岡→地域内異動→佐賀と5回の配転・異動命令(表)。5回目の命令を受けた際、3月に加入していた労働組合(北九州地域一般)を通じて命令取り消しの団体交渉を申し込んだが、回答のないまま着任日の翌日早朝に即日解雇された。その後の団交でも会社側の姿勢は変わらず、澤山さんは16年4月に解雇撤回を求め提訴に踏み切った。

     こうしたパワハラで解雇や退職に追い込まれた被害者は澤山さんだけでなく、既に20人近くに上るという。会社にとって都合の悪い社員には転勤を迫って退職に追い込み、会社に従う者だけが残る。そうしたいびつな労務管理の背景には、常態化する違法行為があった。

     

    ●不払い残業による搾取

     

     同社の労働時間管理は、マークシート式の出勤表に本人が手書きで記入する形式になっている。しかし実際には何時間残業しても、契約書通りの出退勤時刻を記入するよう指示が出ているという。例えば5時間契約のパート労働者は5時間分のみを記入。営業社員は繁忙期で休みがとれず残業が長時間に及んでも、出勤表にはきっちり1日8時間、月8~9日の休日を記入させられているのだ。

     連合通信はある店舗での実際の労働時間が書かれたメモを入手した。それによると、4~5時間契約のパート労働者は、最長の人で一日当たり7時間以上、平均でも6時間勤務していた。毎日パート労働者全員が約2時間不払い残業をしている計算になる(表)。店舗担当の営業社員も休みは月4日程度しかとれていなかった。

     澤山さんは、こうした実態を労働基準監督署に申告し何度も足を運んでいるが、実効的な是正指導には結びついておらず実態は改善されないままだ。

     各店舗での不払い残業代は、膨大な額に上る可能性がある。会社は昨年11月、過去2年間分の未払い残業代の請求権を従業員に放棄させる内容の「示談書」を作成し、営業社員にサインするよう求めたという。

     澤山さんや在職中の営業社員など4人が原告となり昨年12月、同社を相手に未払い残業代を求めて福岡地裁小倉支部に提訴。現在裁判が進められている。