「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    再び「門前払い」に/神奈川最賃裁判で東京高裁

     神奈川県の地域別最低賃金は生活保護を下回り違法だとして、少なくとも千円以上とするよう求めた裁判の控訴審判決が12月7日にあった。東京高裁(山田俊雄裁判長)は原告の控訴を棄却。生活保護と最賃についての国の比較方法に異議を唱えた原告らの訴えは一切審理せず、一審の横浜地裁と同様に門前払いとした。原告らと神奈川労連は上告する方向で検討している。

     裁判では、神奈川労働局長の決定が司法審査の対象となり得る「処分性」の有無が検討された。行政の決定が原告の権利や義務に重大な影響を与える場合には、裁判の審理の対象になるとの運用がされているが、東京高裁は一審同様、「処分性は認められない」とし、訴えを「不適法」とした。

     判決後の報告集会には、全労連や地方労連から支援者が激励に駆けつけた。原告の猪井伸哉さんは「エキタスが『最賃1500円になったら何をしたいか』と聞いたアンケートで多かったのが、『病院に行く』という声。今回の判決はこうした人々の気持ちを踏みにじったのと同じだ」と憤った。

     原告側弁護団は同日声明を発表し、「処分性に関して積み上げられてきた最高裁判決の到達点を無視した不当なもの」と指摘。「国民の基本的な権利に直結する最低賃金の改正決定について、司法による救済の可能性を閉ざしてしまう今回の判決は極めて問題が大きい」と批判した。