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    3千円以上を要求/自動車総連中央委/「国際情勢の様子見はしない」

     自動車関連産業の労組でつくる自動車総連(相原康伸会長、77万人)は1月12日、広島市内で中央委員会を開き、2017春闘で「3千円以上」の要求基準を設定した。賃上げで「働く者の将来不安の払拭(ふっしょく)と日本経済の自律的成長に向けた道筋を示す」と意義を強調。遅れている「税と社会保障の一体改革」の実現を念頭に、「(消費税引き上げなど)相応の痛みを伴っても社会保障制度改革を進める必要がある」とも訴えている。

     

    ●要求基準は昨年と同額

     

     昨年の妥結額はトヨタが1500円、日産が満額の3千円、本田が1100円だった。物価上昇がほとんどないなかで、4年連続のベア要求となる今年、どの程度の水準を確保できるかが注目される。

     相原会長は「労働力人口の減少や、社会保障改革など、先送りしてはならない構造的課題が山積している。(賃上げで)前に進めていく一助としたい。混沌(こんとん)とする国際情勢を見極めなければならないが、2017年の賃上げも様子見ではいけない。経営側者に正面から挑もう」と語った。

     特に強調したのが、中小企業と非正規労働者の賃上げ。昨年は1千余の単組が賃金改善を要求し、うち約7割が改善分を獲得した。今年は賃上げ額、獲得組合数ともに前進させたい考えだ。連合が「大手追随・準拠からの脱却」を掲げる中、同会長は「中小労組が伸び伸びと要求を掲げ、確かな成果を継続的、安定的に得ることのできる総合生活改善闘争に転換させたい」と抱負を語った。

     非正規労働者の要求は、昨年同様20円を目安とした。一時金がある場合は、正社員に準じて取り組む。

     全単組の約8割(871組合)にまで広がった企業内最低賃金(平均15万7313円)の締結組合をさらに増やすとともに、18歳最賃の要求を15万8千円以上に設定。特定最賃の改定をにらみつつ、現在1割強にとどまる、非正規労働者を含む協定締結に取り組むよう求めている。

     政治課題に浮上している長時間労働対策も重視する。職場の現状と問題点を労使で明らかにした上で、具体的には、時間外労働が年間540時間以下となるよう計画的に取り組むほか、特別延長時間が年間720時間を超えている組合には、それ以下で締結することを提起している。

     

    ●産業の持続的発展へ

     

     昨年開始した「付加価値のWIN‐WIN最適循環運動」は2年目に入る。重層的な下請けを特徴とするサプライチェーン全体の付加価値を適正に評価し、格差の是正や人材不足の解消など、産業の持続的発展をめざす取り組み。業界団体を巻き込んだ運動を展開している。

     考え方の浸透を図った初年度に続き、今年は具体的な課題を設定する。適正な取引慣行の促進、「カイゼン」支援などの生産性・付加価値向上、人材確保支援、保育施設の共同設立など地域での協力強化を挙げている。