「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    2017年

    1月

    19日

    インタビュー/(下)グローバル大企業に対抗を/命と暮らし守る運動こそ/アジア太平洋資料センター/内田聖子事務局長

       ――メガ自由貿易協定が行き詰まっている理由は?

     内田 多国籍企業・投資家を優先するルールづくりだということがはっきりしてきたためです。それを許さない運動が広がり、いろんな形で政治に影響しているのだと思います。特に、公共サービスや食の安全、国有企業の問題で企業優先ルールを許していいのかという反発があります。米国では雇用問題も大きな争点になりました。ISDS条項に対しては、欧州が問題視しています。市民運動だけでなく、政府や議会も、TPP協定が規定するようなISDS条項は認められないというスタンスです。医薬品についてはまさに、命を優先するのか、貿易・企業利益を優先するのかという対立軸が明確になっています。

     ――多国籍企業はどうしようとしている?

     内田 彼らにしてみれば、自由貿易協定は乗り物、入れ物に過ぎず、自由化を目指す方向と中身は変わっていません。さまざまな貿易協定を見ても、条文はほぼ同じで、米国の文章が使い回され、コピペ状態です。大手製薬企業は、高価な新薬を開発し、その特許期間を限りなく延長しようといろんな形で追求しています。

     多国籍企業のための自由貿易ルールをつくろうという動きは、今後も形を変えて出てきます。それに対抗する私たちの側の運動、力をどうつけていけるかが問われてきます。

     

    ●多様な目線で監視を

     

     ――運動の側の課題は何でしょう?

     内田 日本では、経済や貿易をなかなか自分の問題として受け止めにくい傾向があります。外国企業に自国のルールが変えられた経験がないからかもしれません。ニュージーランドのように、外国資本に規制緩和や民営化を迫られてひどい目に遭った国民は、どうしても反グローバリズムの意識が強くなります。

     企業や投資家を悪く見ない傾向も強いですね。トヨタは下請けを大事にしているいい会社だと一面的な印象がまかり通る。電通の事件を見てもわかるように、大企業は利潤を追求するあまり人権を軽視する危険があります。だから、消費者や労働組合などが監視し、多様な目線でチェックしていかなければなりません。

     自由貿易協定を推進する人たちは、もうけのためには農業や地方を切り捨てても構わないと考えています。それでいいのかどうか。低成長時代に、みんなが幸せに暮らすにはどんな価値観、ビジョンを持つのか、運動する側もそこを追求し、提示して共有していく必要があるのではないでしょうか。