労使紛争解決の仕組みを検討してきた、厚生労働省の有識者検討会で1月30日、違法解雇でも一定のお金を支払うことで労働者を職場から追い出せる「解雇の金銭解決制」導入に向けた論点が示された。「労働者の選択肢を増やす方向とする」など、労働者のための制度整備という装いを凝らしているのが特徴だ。
検討会は2015年10月、「解雇無効時における金銭救済制度の在り方」を検討するとした「日本再興戦略」改訂(閣議決定)を踏まえスタート。国内外の紛争解決制度などについて検討を重ね、12回目のこの日、本命の金銭解決制導入の論点が示された。
そこでは、労働者の選択肢を増やすとして、「職場復帰を希望しない者が利用できる新たな仕組みとすること」を提案。対象となる解雇、「1回の裁判(三審)」で解決する仕組み、使用者の利用を認めることの是非――などが挙がっている。
同制度は2000年代初めの労働基準法改正時と、その後の労働契約法制定時に、導入が検討されたが、いずれも法案化を断念した経緯がある。
この日、同省から05年当時断念した検討理由を示した省内資料が初めて公開された。それによると、1回の裁判手続きで処理することが困難であることや、現行制度では本訴を含め六審制になりかねないことから、早期解決という導入主旨に反するとの結論が導き出されている。
●まずは労働者限定で
審議では、政府の規制改革会議・雇用ワーキンググループ座長を務めた鶴光太郎慶応大学大学院教授が口火を切り、「せっかくここまで来たので有意義な議論を行いたい」と発言。規制改革会議が15年3月、「労働者側に金銭解決の選択肢を付与する」という意見書をまとめた経緯について、「(過去2回と)全く同じアプローチで議論しても、多分同じ結果になる。新しいアプローチが必要と判断した」と説明し、理解を求めた。
同じく導入に前向きな大竹文雄大阪大学社会経済研究所教授は、「今まで泣き寝入りしていた人がより使いやすい制度になる。労働者としてもいいものだと思う」との持論を展開。労働側からは、既に労働審判が軌道に乗っていることや、違法解雇が横行し社会規範の破壊が懸念されること、制度導入後には使用者側にも制度利用が広げられる可能性などが指摘された。
次回も今後の進め方について議論する。
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