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    「大手水準超え」の中小増える/連合、自動車、JAMの要求集約

     連合と主要産別が2月末~3月初め段階の要求状況を発表している。自動車総連とJAMでは中小労組の「大手超えの要求」が昨年以上に増えている。2年目となる「大手追従・準拠からの脱却」の運動が広がりつつあることに、それぞれのリーダーが手応えを語っている。

     

    ●底上げ、公正取引を

     

     連合は2月27日現在の構成組織の要求状況を集約した。2405組合の要求額は組合員1人当たりの平均(加重平均)は8828円(3・03%)で、昨年より616円低い。一方、300人未満は7914円で、同88円のマイナスにとどまった。非正規労働者の時給引き上げ要求では、142組合の平均が35・13円で同1・34円高い。

     賃金以外の課題では、「正社員への転換ルールの導入、促進、明確化」に取り組んでいる組合が昨年の1・5倍の618件、「無期労働契約への転換促進、転換後の労働条件(整備)」が昨年を若干上回る441件、均等処遇に関する取り組みも502件と多い。男女雇用機会均等法の定着・点検(327件)、若者の職場定着の取り組み(351件)は昨年と比べて大幅に増加している。

     神津里季生会長は、要求額で完成品メーカー労組の水準を超える中小労組が増加していると述べ、「底上げ、格差是正、公正取引の取り組みをセットで行うよう呼び掛けてきた。それが広がってきている」と語った。

    ●ブレイクスルーを

     

     自動車総連は3月2日時点の要求状況をまとめた。ベア・賃金改善分の表記で、1103組合の1組合当たりの平均要求額(単純平均)は3308円。昨年を110円上回っている。

     特徴的なのは、300人未満の中小組合990組合の平均が3308円(昨年は3164円)と、完成車メーカー労組の3千円を上回っていることだ。非正規労働者についても464組合が要求、要請を行っている。

     相原康伸会長は「ややもすると大手を超えるのははばかられるという感覚が(過去に)あったことは否定できない。完全に払拭(ふっしょく)できたとはいえないが、何とかブレイクスルー(突破)したい。産業の総合力で世界の列強とごしていくことと、国内市場の確保は大命題。豊かな市場をつくるためにも労働条件はその根幹をなすものだ」と底上げの意義を指摘した。

    ●値戻し要請に手応え

     

     中堅中小の金属関係労組でつくるJAMでは、3月1日までに交渉単位数の約半数にあたる773組合が要求書を提出した。ベアなど賃金改善分の要求は、503組合平均で4507円となり、昨年を307円下回っている。特徴は中小の要求額が大手よりも高いこと。千人以上規模の組合は4263円だが、300人未満は4539円だ。

     労働政策委員長の安河内賢弘副会長は「中小が例年以上に大手を上回る要求をしている。人手不足、人材不足で中小の現場は苦しんでいるという背景がある。中小に仕事が降りてきているが、月80時間、100時間もの残業を余儀なくされる組合も散見される」と述べ、人材確保のためにも賃上げが不可欠と語った。

     重視する個別賃金の取り組みでは、昨年より約4割多い199組合が要求。現行の賃金水準を開示して要求した組合も同7割増の378組合に上る。

     今年は、「値戻し(単価引き上げ)」を取引先に行うよう自社に要請する取り組みも始めている。単組からは「組合が要請した翌日に経営者が取引先に値戻しを要請した」との報告も寄せられているという。