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    原職復帰求めない事例に適用?/新たな案出される/金銭解決制めぐる検討会

     使用者が一定の金銭を支払うことによって、違法な解雇でも労働者を職場から追い出せる「解雇の金銭解決制」の新たなたたき台が3月2日、厚生労働省の検討会で示された。この問題をめぐる検討は新たな段階に入る。

     金銭解決制の本格審議は2回目。新たに示されたたたき台は、労働者が原職復帰ではなく損害賠償・金銭救済を求めた裁判で、解雇が不法・違法との判決が示された後に金銭解決(労働契約の終了)を行うという仕組み。厚労省の担当官は「(過去2度の検討で)クリアできなかった点を解決するためにどうするかを考えた」と説明したが、労働側からは批判が続出した。

     日本労働弁護団の徳住堅治会長は「原職復帰を求めずに損害賠償を求める裁判はレア(わずか)。リーディングケースと呼べる判決はあるのか。最高裁判例が確立してから立法化するのが一般的。下級審の判決だけで法律にするのは危険だ」と指摘。

     これに対し同省は「胸を張ってそうだといえるものは考えられない。理論的にも未整理で司法判断は未確立。参考にするものがあるかご意見をいただきたい」と、委員らにげたを預ける形の提案となった。

     推進の立場で具体的に方向性を提案したのが、鶴光太郎慶応大学教授。解雇された労働者が金銭救済だけを求める裁判で、違法解雇の判決後に労働契約を終了させる仕組み(概念図)を検討すべきと主張した。同氏は、政府の規制改革推進会議で同制度の導入意見をまとめた責任者である。

     金銭解決制は法制度上導入が困難とされ、過去2回の検討では最高裁の支持を得られず、お蔵入りとなった経緯がある。第2次安倍政権発足後、再び検討されている。次回以降も引き続き、制度の仕組みや、対象となる解雇、使用者側の申し立てなどについて議論する。