「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    「一時金支給」を喜べるか/地公法・自治法改正案の問題点

     政府は3月7日、地方公務員法と地方自治法の改正法案(一括法案)を閣議決定した。非正規公務員の制度と処遇を見直すもので、「非正規にもボーナス支給へ」などと報道されている。自治体で働く者にとって喜べる内容なのかどうか、問題点を探った。

     

    (1)会計年度任用職員って何?/働く者の願いに応えず

     

     改正案のポイントは、任用(雇用)根拠を法律で明確に定めるという点です。

     現在は、特別職非常勤職員(地公法3条の3の3)、一般職非常勤職員(同17条)、臨時職員(同22条)と根拠がバラバラ。しかも、17条については明文規定がなく、解釈で任用できるとしているだけで、あいまいさが以前から指摘されてきました。

     自治体によっても対応が異なり、同じ保育士が、ある自治体では特別職、別の自治体では臨時職ということが珍しくありません。

     こういう状態を整理するため、非正規公務員の大部分を「会計年度任用職員」に移し変え、地公法(22条の2)に明記します【図】。名称からも分かる通り、期間は1年限り(次年度の再任用は可能)。正職員の労働時間と「同じ」か「短いか」を基準に、フルタイムとパートタイムの二つのパターンを想定しています。

     政府は「働き方改革」で同一労働同一賃金など非正規労働者の処遇改善をうたい、「非正規という言葉をなくす」(安倍首相)とまで言いました。そうであれば、「官製ワーキングプア」と呼ばれる非正規公務員についても改善が必要です。働く者の願いに応えるには、任用根拠を整理した上で、どう処遇を改善するのかが問われます。

    (2)非正規にも一時金が出る?/条例次第。賃下げの恐れも

     

     新しい「会計年度任用職員」には、一時金(期末手当)が出るようになると報道されています。確かに法案は自治法203条2の4項で、パートタイムの任用職員には「期末手当を支給することができる」と定めています(フルタイムの任用職員には給料や諸手当を支給)。

     自治省の原案では、パートとフルタイムを区別せず一律に給料・諸手当を支給するという内容でした。ところが、成案はパートだけを切り離し、期末手当に限って「支給できる」と後退させています【表】。

     それでも「出ないよりはまし」かもしれません。本当に一時金が支給されるかどうかですが、問題は二つ。

     第一は「支給できる」という表現です。裏返せば、支給しなくてもいいわけで、自治体の条例次第。不支給は違法ではありません。

     第二は、自治体によっては「一時金は出すが、賃金は減らす」などという姑息(こそく)な手を使う恐れがあることです。一時金を支給するからといって、国が財政措置を講じるわけではありません。自治体の持ち出しです。財政の苦しい自治体がコストを増やさないよう、職員の出勤日数を減らしたり、賃金を削ったりする可能性があります。

     

    (3)長く働くことはできるの?/雇い止め広がる懸念も

     

     非正規職員の強い要求は、賃金アップと雇用継続です。特に年度末に「次年度も働けるかどうか」と心配しなければならない状態を解消してほしいという願いは切実。実際、安易な雇い止めが行われるケースが少なくないためです。

     法案はこの点を改善しているでしょうか。答えは「ノー」です。従来も任用(雇用)期間は総務省通知で「原則1年以内」とされていました。法案でも「最長1年」(会計年度の範囲内)であり、基本的な考え方は変わっていません。

     心配されるのは、これまでの通知と違い、法律で「1年」と定めることの影響です。実際には再任用(民間の契約更新)を繰り返して長期に働いている人に対し、「法律で1年とされた」ことを根拠に雇い止めをするケースがあり得ます。そうならないよう、労働組合の監視・取り組みが不可欠です。

     「1年」が独り歩きする恐れもあります。特に、公務員バッシングに熱心な議員がいる自治体では、組合の努力で獲得してきた労働条件への風当たりが厳しくならないか、懸念されます。「1年しか働かない職員に対して退職金や経験加算給(民間の定期昇給)を支払うのはおかしい」という声が上がりかねないのです。

     

    (4)労働基本権はどうなる?/新たな権利制約へ

     

     非正規公務員の中でも、特別職非常勤職員にはストライキ権を含む労働基本権が認められています。基本権を制約する地公法の適用除外になっているためです。現在はスト権があり、労働委員会を活用することもできます。

     ところが、法案では特別職非常勤職員は審議会委員などの「有識者」に限定し、大部分の職員は新たな「会計年度任用職員」に移されることに。地公法に位置付けられる以上、他の公務員と同様、労働基本権は制約を受けます。労働協約締結権やスト権はなくなり、労働委員会の活用も不可能になります。

     スト権や労働委員会を使って運動を進めてきた組合から「権利の剥奪だ」との声が上がっているのは、そのためです。

     ただし、労働基本権の適用内容は、もともと職種によって異なっている点に注意が必要です。現業職員の場合は労働協約締結権があり、労働委員会の活用も可能です。この点は、現業系の会計年度任用職員も同じ。スト権はなくなりますが、労働委員会は使えます。勤務条件の是正を人事委員会に求める措置要求を含め、全体として権利救済のあり方をどうしていくのかの議論が求められます。

     

    (5)正規職員への道はある?/無権利パートを拡大・固定化

     

     民間職場では、有期雇用を無期雇用に転換できる仕組み(労働契約法)や、正社員への登用制度がつくられています。「民間準拠」が原則の公務にこうした制度を適用してもいいはず。

     正職員と同じ仕事に就き、恒常的な業務に従事している非正規職員は少なくありません。民間にならって、無期雇用化や正規化を目指すのが筋ですが、法案はそこまで踏み込んではいません。

     会計年度任用職員について、フルタイムとパートに分けるとしている点も心配です。その基準は正職員の労働時間と同じかどうかです。極端なケースですが、それまでフルタイムだった人を1日15分だけ短くしてパートに移すことも可能です。給料や諸手当を支払わなければならないフルタイムより、「期末手当を支給できる」だけのパートの方が安上がりです。

     退職金支給などを求めた裁判では、正職員の4分の3程度の労働時間なら、「正規と同様の常勤職員」とみなして支給すべきとの判決が出されています。常識的な判断基準でしょう。法案は、「同じか、短いか」だけの基準ですから、労働時間が4分の3でもパートに分類される恐れが十分です。

    コメントをお書きください

    コメント: 3
    • #1

      シゲル (土曜日, 24 6月 2017 19:30)

      国や自治体が都合のいい職員を増やすだけで、何も変わらない。公務労働の大切さや国民の生活を壊さないようにしてもらいたい。

    • #2

      (月曜日, 26 6月 2017 09:10)

      「自治省の原案」と記事中にありますが、自治省はなくなっているので、誤記だと思います。

    • #3

      理不尽 (金曜日, 20 10月 2017 00:19)

      独法などは専門機関のはずなのに、総合職より資格も経験も豊富な契約職員に専門的な仕事を丸投げして、知識も経験もほとんど持たない総合職の事務方には勤続年数だけで倍以上の給与を与えている。近視眼的な既得権益だけが守られ、大量の職能を使い捨てするこのような理不尽な社会が先細るのは目に見えている。