中堅中小の金属製造業労組を中心につくるJAMが集計した3月29日現在の回答状況によると、300人未満の中小企業の回答水準が、300人以上の中堅・大手を上回っている。30歳、35歳などの特定の銘柄の賃金水準を明示して、その引き上げを求める個別賃金要求の取り組みを行った組合は、昨年から約100組合増加した。高額の賃上げにつながっているケースもあり、産別本部は引き続きこの取り組みを進めたいとしている。
回答を引き出した組合のうち賃金構造維持分が分かる283組合のベア・賃金改善分の平均は、昨年同期より142円マイナスの1285円。内訳は300人未満の180組合が1397円で、300人以上(103組合)の1088円を上回った。連合が「大手追従・準拠からの脱却」方針を打ち出した昨年以来の傾向である。求人倍率の高い地域ほど顕著な結果が表れているという。
賃金構造維持分も含めた平均賃上げの回答額は、同一組合比較で昨年マイナス2円の5498円。300人未満では同昨年プラス70円の5212円と健闘している。
安河内賢弘労働政策委員長は「『大手追従からの脱却』という点で一定の成果が出ている。定着するよう取り組みを続けたい」と説明するとともに、人手不足の影響も指摘。「大手や中堅で仕事をこなせず、中小に仕事が下りてきているが、人が採れない。人材の確保よりも今いる人材の維持が必要になっている」と背景を語った。
●交渉モデル見えてきた
今年特に力を注ぐ、あるべき賃金水準への到達をめざす個別賃金要求でも前進した。30歳、35歳の特定の銘柄の賃金水準を示してその引き上げを求めた組合は280組合で、昨年より99組合増えた。JAM結成以来最高。回答を得た組合は昨年比35組合増の120組合に上る。
実際に成果も表れているという。これまで56組合が2千円以上の回答を獲得しているが、このうち44組合が300人未満で、多くが個別賃金での要求だ。
離職防止が経営の重要課題となる中、他社の賃金水準は経営者にとっても気になるところ。複数の組合で詳しい説明を聞きたいとの要望が経営側から寄せられるなど高い関心が示されたという。大手組合が相場をけん引する従来方式の見直しが連合全体で進められる中、宮本礼一会長は「ベア春闘4年目にしてようやく交渉モデルが見えてきた」と手応えを語っている。
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