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    「処遇低下は法案の趣旨でない」/地公法等改正案の政府答弁/自治体には「助言」だけ?

     地方公務員法と地方自治法の改正案が4月13日に参議院を通過した。舞台は衆議院に移り、政府は4月中にも法案を成立させたい意向だ。しかし、自治体非正規職員の処遇切り下げや安易な雇い止めの横行など、法改正に伴う懸念は参議院審議で解消されたのだろうか。政府答弁を振り返っておきたい。

     改正法案は、非正規職員の任用根拠を初めて法律で明確化した上で、処遇改善を目指すものだという。非正規職員の大半を新たに設ける「会計年度任用職員」に移行し、フルタイム非正規には給与と手当を支払う。パートタイム職員には例外的に期末手当を支払えるようにするという内容だ。任用期間は「最長1年」と規定している。

     

    ●マニュアルで助言

     

     自治体の現場からは、処遇切り下げや安易な雇い止めが起きるのではないかとの懸念が出されている。これまで労働組合の取り組みによって一時金や退職慰労金、民間の定期昇給に当たる経験加算給などの処遇改善や、事実上の継続雇用を勝ち取ってきた職場が少なくない。「期末手当だけを払える」という会計年度任用職員になることで、こうした処遇が崩される恐れがあるためだ。

     裁判でも、常勤職員の4分の3程度の労働時間であれば、常勤職員並みの処遇は可能との判決が出されている。こうした判決に沿って改善してきた自治体労組ほど、法改正への不安は強い。

     参院総務委員会の審議で政府側は「いわゆる雇い止めを行うとか処遇を引き下げるといったようなことは、改正法案の趣旨に沿わないものと考えている」と答弁。自治体に法の趣旨に沿った対応をしてもらうため、夏までにマニュアルを作成して助言していくことを明らかにした。「4分の3問題」については、考えを明らかにしなかった。

     

    ●雇い止め不安消えず

     

     法案が任用期間を「最長1年」と規定していることの負の影響は小さくない。

     この点で政府側は「再度任用の取り扱いはこれまでと変わるものではない」と答えている。つまり、従来通りに事実上の契約更新をして働き続けられますよ、ということ。とはいえ、総務省の対応はマニュアルによる自治体への助言にとどまる予定。自治体が「法律で最長1年とされたのだから雇用は1年限りだ」と強弁してきたときに、助言が歯止めになるのかどうか。

     

    ●17条職員は残せる?

     

     労働条件の不利益変更や雇い止めへの不安から、会計年度任用職員に移行せず、これまでの「一般職非常勤職員」(地公法17条)として残ることができるのかどうかも議論に。

     政府側は「ただちに違法となるわけではないが、会計年度任用職員として任用していただくことが適当」であり、そのように自治体に助言していくと答えた。

     少なくとも違法でないことは確認された。あとは自治体の対応次第となる。

     

    ●更新のたびに試用期間

     

     野党議員からは、「会計年度任用職員」という名称や、繰り返し任用されるたびに1カ月の試用期間が設定されることについて、「1年限り」という印象を与えるもので、「現場では評判が悪い」「経験のある職員をばかにするのかという声も上がっている」などの指摘が相次いだ。

     政府側は名称について、職員募集時などの呼称は自治体の判断で構わないと答弁。一方、試用期間は必要だとして譲らなかった。

     

    ●財政措置は「検討」

     

     議論が集中したテーマが財源問題だ。いくら法案が処遇改善をうたっても、多くの自治体で財政がひっ迫している現状では、コスト増になる処遇改善に踏み出しにくいからだ。

     実際、共産党議員からは「期末手当の支給が可能になるが、ある市では総支給ベースで検討するとされている。月々の報酬を引き下げて、その分を期末手当に回そうということ。これでは処遇は改善されない」と述べ、政府による財政措置が必要だと迫った。

     政府側はこうした事例に対しては「法の趣旨に沿った対応をしていただくよう、自治体に助言していく」と答弁。財政措置に関しては高市早苗総務大臣が「自治体の対応を調査し、実態を踏まえながら、地方財政措置についてもしっかり検討していく」と述べ、含みを持たせた。