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    政府の長時間労働対策に異論/日弁連が労働時間考える集会

     日本弁護士連合会が4月20日に開いた、労働時間法制を考える院内集会では、政府の長時間労働対策に異論、注文が相次いだ。批判の矛先は、過労死認定水準の上限規制や、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制)の創設に向けられた。

     日弁連は昨年、36協定の特別条項を廃止し、月45時間・年360時間の残業上限の法定化、将来的には1日2時間、年180時間程度の上限などを提言した。

     その内容を紹介した同貧困問題対策本部の房安強弁護士は、政府の上限規制について「過労死認定基準に接していて労働者の生命、安全を守れない。当初の懸念が現実化した」と強調。勤務間インターバル制度(休息時間保障)を罰則付きで法律で義務付けることが必要と述べるとともに、低過ぎる現行の時間外・休日割増率の引き上げが抜け落ちている点を指摘し、他の先進国と同様に5~6割以上とすることが急務と語った。

     昨年野党4党がまとめた長時間労働規制法案を説明した井坂信彦衆院議員は、高プロ制度、裁量労働制の拡大を進める政府の姿勢を「穴の開いた天井(上限規制)をつくろうとしている」と批判。「こんな上限時間でいいのか、高プロ、裁量制拡大の二つの穴をふさぐこと、勤務間インターバル規制をなぜしないのか、これが国会で議論になる」と語った。

     全国過労死を考える家族の会の中原のり子東京代表は「過労死を容認する内容だ。裁判や法制化の運動で積み上げてきた成果を否定しかねない」と苦言を呈し、毛塚勝利法政大学大学院客員教授は低廉で過剰なサービスのまん延に触れ「上限規制は必要だが、長時間労働を招いているのはわれわれ自身だという認識が必要だ」と語った。