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    〈米国メーデー〉06年以来の大規模デモへ/「差別反対」掲げ新たなうねり

     

     「雇われない」働き方をする労働者の数が米国で増え続けている。2020年には就業者の4割を超えるとの推計もある。労働条件に関する交渉力がなく、労働組合を組織できず、企業が費用を負担する健康保険や年金もない。「分かち合う経済(シェアリング・エコノミー)」という聞こえの良い言葉の下で、低い対価と社会保障の状態に従属的に置かれている。

     こうした労働者の権利を守り、職業訓練の機会を提供するための組織にフリーランサーズ・ユニオンがある。会員数は30万人を超える。そのウェブサイトの「メーデーってなに?」という記事では、ヘイマーケット事件に始まるメーデーの起源が米国にあり、世界中で記念日とされていることが説明されている。

     それほどにメーデーは米国労働者にとって縁遠いことがうかがえる。政府と労働組合はこれまで9月第1月曜日を「労働者の日(レーバーデー)」としてきた。メーデーの持つ抵抗と流血のニュアンスを嫌ったためだ。

     

    ●労組の枠超えて

     

     その流れは06年5月1日に変わった。不法滞在の状態にある移民労働者やその家族の権利を守る象徴の日として、全米50都市以上で数百万の人々がデモに参加したのだ。労働組合は公式に加わっていない。

     16年の労働組合組織率は10・6%。労働組合の周縁に存在している移民や、雇われずに働く労働者、労組に組織されていないレストランや小売などの労働者。そうした人たちを支援する組織によってデモが行われた。多くの労働者が「ゼネスト」の名の下に職場を放棄した。以来、米国メーデーは既存の労組の枠組みを超えたものとなっている。

     

    ●数百万人が決起へ

     

     今年のメーデーは06年の再来となるといわれている。ウェブサイトやSNSでは「#May1Strike」や「#ShutItDownMay1」という合言葉が飛び交う。移民労働者、人種差別がやまないアフリカ系米国人、LGBTQ(性的マイノリティー)、女性労働者などに全米各都市でのストライキが呼び掛けられ、多くのデモが計画されている。

     ストの対象の多くは低賃金で働かせている小売やレストランだ。米国では労組の活動は全国労働関係法という法律によって規定され、労働組合によらない組織のストは認められていない。それでもなお、たとえ非合法であっても再び数百万人の労働者がその道を選ぼうとしている。米国の新しい労働運動は既存組織ではないところから始まろうとしている。それがこの国の新しいメーデーだ。(労働政策研究・研修機構 山崎憲主任調査員)