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    〈英国メーデー〉多彩なプログラムで活気/マンチェスターの活動に注目

     英国では、働く者の祭典メーデーは手作り・自主参加が基本だ。首都ロンドンでも、5千人が集まれば成功といえる。そうした中、ここ数年、マンチェスター労働組合会議(MTUC)の「地方メーデー」に注目している。参加者は千人規模だが、昨年は5月1日とその前日に多彩なイベントを繰り広げた。今年も市内3カ所で2日間のプログラムを予定している。

     

    ●TUC発祥の地で

     

     英国第2の都市マンチェスターは、19世紀の産業革命で中心的な役割を果たし、1868年に英国労働組合会議(TUC)の第1回大会が開かれた地だ。製造業にかつての勢いはないが、労働運動は衰えを知らず、組織率は全国平均を上回る。

     2年前にMTUCの加盟組合や友好団体が式典に分担金を拠出することを決め、メーデーが復活した。昨年は、デモや集会・討論会に加え、演劇・コーラスもあり、文化祭としても成功した。

     初日は、ダブリンの労組代表を交えてアイルランドの政治闘争史を議論した。アイルランド移民が多い地域であり、2国間交流は深い。シカゴから招いた教員組合は、1年間にわたり無協約状態だったが、ストライキを背景に苦境を打破した闘いを報告した。スペイン内戦70周年の記念講演もあった。英国では労働組合員など2500人が国際外国人義勇兵としてファシストのフランコ軍と戦った歴史がある。1980年代の炭鉱ストを指導したアーサー・スカーギル元炭労委員長や公務員、教員、消防士組合の中央本部書記長があいさつした。

     

    ●職場から運動創る

     

     MTUCのクリス・マークス事務局長は「デモや集会も大切だが、それだけでは不十分。どうしたら緊縮財政を跳ね返し、資本の攻撃に挑めるのか。職場の労働者や組合の活動家たちは勝つための議論をしたいのだ」と多彩なプログラムを組んだ背景を語る。「中央の運動と違っていても構わない。むしろそれを誇りに思う。トップダウンではなく、職場から運動を創っていく」と強調する。MTUCの三役らは非専従で、現役の労働者だ。

     今年のメーデーは、4月29、30日の週末に開催される。「国民医療サービス(NHS)の民営化や統一学力テストの反対をあらためて訴える。地方分権の推進やベーシックインカム(最低限所得保障)の是非についても討議を深めたい。もっと家族で参加できる形にしたい」とマークス事務局長は抱負を語る。

     来年はTUC発足150周年だ。発祥の地マンチェスターで盛大に祝うため、今年もメーデーを成功させて結束力を高めたいと、関係者たちは意気込んでいる。(浦田誠・国際運輸労連内陸運輸部会長)