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    不利益をどう回避するか/改正地公法/自治体労使の対応が鍵に

     5月9日の衆議院総務委員会で、地方公務員法などの改正案が可決された(共産党は反対)。法案は非正規公務員の任用根拠や労働条件を見直す内容。既に参議院審議は終了しており、近く開かれる衆院本会議で成立する見通し。施行は3年後で、それまでに各自治体で条例改正を含めた制度見直しが求められる。

     

    ●総務省は助言のみ

     

     これまで自治体の非正規公務員は任用根拠があいまいでバラバラだった。法案は、大半の非正規職員を新たに設ける「会計年度任用職員」と位置付け、フルタイム職員には給与・手当を支給。パート職員には例外的に期末手当(一時金)を支給できることにする。

     これまでの国会審議では、(1)会計年度任用職員への移行に当たって労働条件が不利益変更されるのではないか(2)任用期間が「最長1年」とされることで安易な雇い止めが横行するのではないか(3)現在は労働基本権が認められている特別職非常勤職員から権利を剥奪するのは不当ではないか(4)期末手当の支給といっても財源はどうするのか――などが論議されてきた。

     政府(総務省)は「不利益変更や雇い止めは法改正の趣旨に沿わない」として、夏までに自治体向けのマニュアルを作成して通知し、助言していくと答弁した。

     

    ●どうなる17条職員

     

     9日の参院審議では、衆議院段階より踏み込んだ答弁があった。現在、地公法17条を根拠に任用されている一般職非常勤職員について、新たにつくる会計年度任用職員に移行せず、17条職員のまま残れるかどうかという論点だ。総務省側の見解は「残すのは違法ではないが、残さないよう助言していく」というもの。この日はさらに、「17条非常勤職員への期末手当支給は違法」と明言した。

     自治体によっては、現行17条職員に対して期末手当や退職手当を支給しているケースがある。17条職員を残した場合、期末手当支給は違法となり、削減せざるを得なくなる。一方、会計年度任用職員に移行した場合、期末手当支給は合法となるが、退職手当などの支給は難しくなる。どちらを選択しても労働条件の切り下げにつながるのだ。

     

    ●財政措置は不明確

     

     こうした問題を含め、今後、自治体では改正法を踏まえた対応が迫られる。

     総務省は対応マニュアルの通知と助言にとどめる姿勢であり、具体的な制度見直しに当っては自治体労使の話し合いが鍵となる。政府の財政措置が不明確な中で、働く者への不利益をどう回避するかが問われることになる。