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    石綿被害補償基金創設を/建設アスベスト訴訟/提訴から9年で決起集会

     建設現場で石綿(アスベスト)の粉じんを吸い深刻な病気になったとして、国と建材製造企業に対し、謝罪と賠償を求める集団訴訟が提訴から9年を迎えた。既に全国で5度続けて国の責任を認める判決が出され、初の高裁判決も近づく。提訴後9年を機に裁判勝利と石綿被害補償基金の創設を訴える集会が5月19日、東京の日比谷野外音楽堂で行われた。

     首都圏建設アスベスト訴訟統一本部の松丸一雄本部長は「全国各地の原告763人のうち既に160人が提訴後に亡くなった。苦しんで倒れた仲間の悔しさと、家族の悲しさ、無念は計り知れない。被害者の命をかけた闘いに応え、補償と被害根絶に向けた運動を大きく前進させよう」と呼び掛けた。

     ステージの前には遺族らが遺影を胸に並び、白田宏記全建総連副委員長が追悼の辞を述べた。両肺に水がたまりながらも裁判勝利を訴え続けた、ある原告の生前をしのび「命を削ってまで主張した思いは、『一刻も早く全ての被害者を救済し解決してほしい』。この一点に尽きる」。石綿被害者補償金制度の創設による早期解決を訴えた。

     裁判では、これまでに全国五つの地裁で国の規制権限不行使を指摘。京都地裁では建材企業の責任も認定した。「石綿被害についての国の責任はもはや揺るぎない」といわれる。

     初の提訴から9年。「命あるうちの解決」を訴えているが、国はまだ救済の協議に応じていない。