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    TCSグループとの闘い・上/東京都労委で勝利命令/精密機器製造のセコニック

     企業買収で急成長し、買収先労組に激しい切り崩しを行うことで知られる「TCS(東京コンピューターサービス)グループ」が再度断罪された。東京都労働委員会は6月21日、精密機器製造のセコニック(東京都練馬区)に対し、ユニオン・ショップ協定をはじめ全ての労働協約を失効させたことを不当労働行為と認定し、救済を命じた。一連の争議は一つの節目を迎えたが、解決への道はまだ見えない。

     

    ●同意をほごにし、失効

     

     セコニックは2010年、同社の筆頭株主となったTCSグループの傘下に入った。それまで上部団体に所属していなかった社内労組が危機感を覚えてJAMに加入。翌年、取締役会長に、グループ総帥の高山允伯TCSホールディングス社長が就任すると、組合への攻撃が始まった。

     会社は冬の一時金不支給を通告。持ち株会社を新設して社員を採用し、セコニックに「出向」の形で働かせるようになった。それ以降、組合への新規加入は途絶えた【表1】。

     15年8月にはユニオン・ショップ協定の解約をはじめ、更新期限を迎えた51もの労動協約の見直しを提案した。組合つぶしの総仕上げに着手したのである。組合は、組合活動への便宜供与切り下げなどで大幅譲歩を表明。ユ・シ協定解約についても、「出向」者を組織できるよう、協約の見直しを条件に受け入れる姿勢を示していた。

     そのうえで、合意できた協約から改定しようという組合の提案に、会社側の交渉担当者もいったんは同意したが、次の交渉で撤回。会社提案の丸のみを求める姿勢に転じた。交渉は決裂し、11月、全ての協約が失効した。

     

     

    ●協定は生き続ける

     

     東京都労委は6月21日、会社側の一連の措置について、「組合運営に対する支配介入」と認定した。同社に対し、いったん合意していた協約の締結を拒否してはならないと指摘。ユ・シ協定については、「出向」者の扱いなどで組合との合意が得られない限り、従来通りの扱いとするよう命じた。合意が得られなければ協定は生き続けるということだ。

     組合の主張はほぼ全て認められたが、同社は中労委への再審査を申し立てた。長期化も懸念される。

     

    〈TCSグループとは〉

     

     TCSグループは、東京コンピュータサービスを母体とする企業グループ。ソフト開発を中心に事業を手がけてきたが、近年企業買収によって事業の種類、規模を拡大し、約70もの企業を傘下に収める。グループ企業で株式を買い占め、経営への拒否権を得る3分の1超を得た段階で、業務提携を持ちかけ、役員派遣などを通じ経営の実権を得るという手法だ。

     その組合切り崩し策は過酷だ。一時金不支給に賃金削減、組合の脱退勧奨などを強行し、救済命令が出ても繰り返す。企業再編を通じて組合への新規加入を防ぎ、組合役員をマイナス査定や配転で締め上げる。時には人格を否定するような罵倒を行うこともある。組合を疲弊させるのが狙いといえる。