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    Q&A/過労死も自己責任に/高度プロフェッショナル制

     Q 高度プロフェッショナル制って何?

     A 残業や深夜、休日労働の規制を全部なくしてしまう制度。米国のホワイトカラー・エグゼンプションを下敷きにしている。どれだけ残業しても残業代は出ないので、残業代ゼロ制度とも呼ばれる。

     Q 新聞によっては「脱時間給」制とか「成果型労働制」とか呼んでいる。

     A 政府の説明をうのみにした呼び方だよ。正しくは、労働時間規制の適用除外。法案は成果主義的な賃金を定めてはいない。第1次安倍政権当時、「残業代ゼロ制度」と呼ばれて廃案に追い込まれ、政権崩壊につながった。その轍(てつ)を踏まないための対策なのだろう。

     Q 「ダラダラ残業」がなくなるというけど。

     A ひどい説明だね。残業がなくならないのは、人手に比べて仕事量が多かったり、急な仕事への対応が多いから。国の過労死等防止対策白書でも明らかにされている調査結果だ。経営者、従業員双方の聞き取りで同様の結果が出ている。労働時間規制をなくしても労働時間短縮にはつながらない。逆に、企業の残業代支払い義務がなくなり、長時間労働で健康を損ねても働き手の自己責任とされるだけだ。

     Q 年収が高い人に限定されると聞いた。

     A 年収1075万円以上と線引きしているけど、いったん導入されれば容易に引き下げられる。塩崎恭久厚労相は一昨年、経営者団体の会合で「取りあえず通すことだ」と述べ、導入後の年収要件引き下げをほのめかしていたことは記憶に新しい。経団連はかつて400万円という線を引いていた。

     

    ●諦めずに声上げよう

     

     Q 連合が修正を政府に要請したそうだね。

     A 事実上導入を容認したということ。2015年の法案提出後も、政府与党は世論の反発を恐れ、たなざらしにしてきたが、これで成立のハードルはぐっと下がった。要請した修正内容は、年間104日以上の休日を義務付けることなど。現実の年間休日数を下回る上、休日を与えれば24時間働かせることも可能だ。

     Q 国会は与党が多数。現実的対応が必要では?

     A 原案通りに成立させないよう、職場や地域で世論をつくり出す努力をするのが労働運動の本来のあり方ではないか。

     そもそも、残業の上限規制と、この制度は全く矛盾している。長時間労働のブレーキとアクセルを同時に踏むようなものと指摘される。この矛盾を指摘し、引き続き、諦めずに声を大にして訴えていくことが必要だ。