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    インタビュー/労働組合の自殺行為/連合の高プロ制容認/森岡孝二関西大学名誉教授

     連合が高度プロフェッショナル制度(高プロ制)を事実上容認したことについて、過労死等防止対策全国センター代表幹事の森岡孝二関西大学名誉教授は「労働組合の自殺行為」と厳しく批判している。

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     高プロ制は労働時間や残業の概念をなくす点で、労働時間規制の根幹を崩します。労働者の賛成は得られないでしょう。何年か後に「大変な法律を容認してしまった」と思い知らされる時が必ず来ると思います。

     労働者派遣法が1985年に成立し、その後次々に規制が緩和され、派遣労働が広がっていった以上のことが起きると懸念します。年収要件1075万円以上は残業代込みの金額。経団連が唱えるように、成立後は800万円、さらには400万円に引き下げられるのが必定です。歴史に汚点を残す、労働組合の自殺行為と言わざるを得ません。

     連合傘下の組合から、疑問や批判の声が上がり、政労使合意を先送りせざるを得なくなったのは当然のことです。

     年間104日の休日確保の義務付けなどの修正を要請していますが、修正にはなりません。この数字は単純に週休2日とした場合の休日数。年休20日、祝祭日16日は含まれていない。毎日4時間残業させて年間3千時間以上働かせることも可能です。

     勤務間インターバル(休息時間保障)も義務付けではなく、休息時間数の規定も全くない。実効ある規制とはいえません。

     

    ●上限規制も極めて有害 

     

     今回の政府要請への流れは、3月に「働き方改革実行計画」が政労使で合意された段階で既にできていたと思います。政府と経団連が作った枠組みに連合が乗ったということです。

     残業上限規制を実現するために、一括法案とされる高プロ制をのまざるを得ないという説明がされているようですが、この上限規制自体、時間外労働規制とは言えない代物です。過労死を生む労働時間を「法認」し、長時間労働を「放任」するという二重の意味で誤りをおかしています。過労死家族の会、過労死弁護団も強く反対しています。

     脳・心臓疾患での労災認定は約半数が100時間未満。60時間台の認定もあります。精神疾患では6割が100時間未満です。実行計画の月100時間未満の上限では過労死防止対策には全くなり得ません。

     また、過労死問題に取り組む弁護士は、この上限ができることにより、企業への損害賠償請求が認められにくくなるのではないかと案じています。

     現政権をめぐる一連の疑惑で、支持率は急落し、安倍首相に対する責任追及の声が強まっています。なぜこの時期に、連合が救いの手を差し伸べるのか、理解に苦しみます。