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    AIは労働者を幸せにするのか(2)/アルファ碁シンドローム

     5月下旬、世界最強といわれる棋士・柯潔(か・けつ)9段と人工知能(AI)「アルファ碁」との3番勝負は、アルファ碁の3連勝で終わった。昨年3月には、同じくトップ棋士の李世ドル9段(イ・セドル/韓国)に4勝1敗で勝ち越している。もはや人間では勝つことが不可能なレベルの強さになったと評価されている。

     アルファ碁に使われているAI技術が「ディープ・ラーニング」(深層学習)だ。大量のデータをコンピュータに学習させることで、そのデータのどこに着目するべきかをコンピュータ自身が習得し、賢くなっていくプログラムと考えると分かりやすい。「第3次人工知能ブーム」の牽引役になっているのもこのディープ・ラーニングだ。人間界で最も複雑といわれるゲームの囲碁で人間を圧倒したことから、「AIは人間の知的処理をほとんど代行できるようになった」という声さえ聞こえる。 

     しかし、人工知能学会ではこうしたブームへの懐疑的な見方も相次いだ。学会会長で国立情報学研究所の教授を務める山田誠二氏は「人工知能は工学の産物で、単なるプログラム。生物のような進化があるものではなく、過度の擬人化は非生産的な議論だ。人間との能力差はまだ歴然としている」と警鐘を鳴らす。

     慶応大学理工学部教授の山口高平氏は「現状はアルファ碁シンドローム(症候群)。AI開発の企業には〃この業務をAIで代行できないか〃といった引き合いが殺到しているが、かなりの割合で頓挫している」という。(続く)