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    Q&A/AIは労働者を幸せにするのか(13)(最終回)/人工知能は人間を超えるか

     Q 人工知能(AI)の進歩がすごいっていうけど、人間の知能レベルに達しているの?

     

     A 毎日新聞に最近載った「AIと言葉」というコラムに「文章、とりわけその場その場の人間の真実や心情を読み解く力となると、AIにも限界があるように思われる」と書かれていた。AIに文章を読み解く力があることを前提にしたような内容だけど、これは思い違いなんだ。実はAIには人間の言葉や文章を理解する力はない。「知能」と名乗ってはいるけど実態はコンピューターのプログラム。命令もデータも、全てが数字に置き換えられ、計算したり、分類したりしているだけだ。

     

    ●処理速度が速いだけ

     

     Q でも、質問すると気の利いた答えを返してくれたり、新聞記事や小説を書いたりするAIもあるんでしょ?

     

     A 言葉を理解しているように見せているだけ。かいつまんで言うと、ネット上の膨大なデータを取り入れることで、「A」という文章が入力されたときには「B」という言葉が続く確率が統計的に高いと計算している。ただ、学習するデータ量が圧倒的で、かつ処理速度がとてつもなく速いので、人間の目にはAIが言葉を理解したように映るという仕掛けだ。

     AIで東大入試に挑戦するプロジェクトのリーダー新井紀子氏(国立情報学研究所教授)は「『意味を理解する』ということが、機械=コンピューターにはとてつもなく難しい」「だから、機械は統計を用いて『近似』しようとする」(新井氏著「ロボットは東大に入れるか」)と説明している。

     

    ●意識を持てる?

     

     Q だとすると、人間の知能に勝るAIによって、人類が滅亡させられるなんてあり得ないね。

     

     A シンギュラリティ(技術特異点)と呼ばれる問題だね。すごい勢いで進歩したAIはやがて意識を持ち、自分で行動するようになると主張する人は確かにいる(※)。だけど、AIはコンピューター上で動くプログラムに過ぎないし、言葉を理解することさえできないわけだから、意識を持つなんて考えられない。

     人工知能学会の山田誠二会長は「シンギュラリティは、AIを研究するわれわれからすれば噴飯物」と強く否定。「AIが人間を支配することなどあり得ないのが研究者の常識」と、危機感をあおる論調を一笑に付している。

     ※世界的な理論物理学者スティーブン・ホーキング博士は「完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」「人類は…(人工知能に)取って代わられるだろう」と警鐘を鳴らしている。

     

    ●仕事の一部は奪われる

     

     Q 優秀なAIに人間の仕事が奪われるなんてことも取り越し苦労かな?

     

     A 駅の改札や預金の出し入れなど、これまでも機械やロボットに置き換わった仕事はたくさんある。その延長線上で高速道路の長距離輸送が、自動運転のトラックで行われるといった変化が起きるのは間違いない。

     だけど、AIへの全面的な置き換えについては、研究者の多くが否定する。「コンピューターが職場に入ったときよりも影響は小さい」「仕事の一部がAIに代わるだけ」「より知的な仕事に人間は集中できる」といった意見が多数派だ。

     もちろん、仕事の一部がAIによって行われるようになれば、正社員・フルタイム労働者から非正規・パートタイムへの置き換えが進む危険はある。AI導入を口実に「解雇規制緩和」や「労働者の個人事業主化」を進めようという政府レベルの動きも注視する必要がある。

     

    ●想定外行動の有無

     

     Q 労働者としてどんな備えが必要かな。

     

     A AIが入ってくる形は職場ごとに異なるはず。一律的な準備はしようがない。ただ、実際にAIが導入される段階では、労働環境の悪化につながらないよう声を上げていくことが必要だろうね。

     現在のAI開発ブームの起点となったディープラーニングについて、京都大学特命教授の中津良平氏がこんなことを言っている。

     「ディープラーニングが学ぶデータは過去データ。したがって想定内の範囲の結論しか出てこない。これに対して、ときに想定外の行動を取るのが人間だ」

     アフリカで生まれた祖先は、6万年前にわずかな数が各大陸へと渡ることで、爆発的に進化を遂げたといわれる。なぜ、危険を顧みず5万キロもの旅をして各大陸へと散らばったのか。中津氏は「AIならば絶対にそんな判断はしない」と述べた上で、想定外の行動を取る人間だからこそ、現在の発展をなし得たと強調している。人間の持つ可能性、人間にしかできないことにもっと目を向ける時代になっているのかもしれないね。(終わり)