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    労組が白人至上主義に対抗/米国/差別デモや集会を実力阻止

     サンフランシスコでは8月末、学生、労働者、人権団体メンバーらが立ち上がり、白人至上主義者の集会を連日にわたって実力阻止した。ボストンでも数万人がデモ行進して、極右やネオナチが同市に結集するのを断念させた。

     

    ●トランプ大統領を批判

     

     米国第一主義を掲げるトランプ大統領が登場して以来、従来の保守イデオロギーをはるかに超える極右派的な「オルト・ライト」勢力が各地で誕生。一方、これに対抗する運動も形成されている。8月12日にバージニア州シャーロッツビルで起きた衝突では、極右の男が反対派の女性を車でひき殺し、国内外に大きな衝撃が走った。

     トランプ大統領は「双方に非があった」という見解を示したため、各界から一斉に非難の声が上がった。米国労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のトラムカ会長は「テロ行為や偏見を容認している」と、大統領諮問会議の「製造業評議会」から抗議の辞任。財界のメンバーからも離反者が続出した。「戦略政策フォーラム」でも同様の事態となり、両諮問会議とも翌週に解散した。

     組合員の多くがシャーロッツビルの対抗デモに参加した看護士組合は「あらゆる形の白人至上主義と人種差別・偏見を断固拒絶することは私たちの義務」と強調。全米州都市労組(AFSCME)は南部の公民権運動団体へカンパ金を拠出すると発表。トランプ寄りと言われる建設関係組合も「人種憎悪などに毅然(きぜん)と挑む指導者が必要」と大統領を批判した。

     

    ●ファシズムは許さない

     

     サンフランシスコでは、オルト・ライト系団体が示威行動を公表した8月中旬、港湾労組(ILWU)第10支部が先頭に立って対策を協議。5月にポートランドでイスラム教徒の女性をネオナチの男から守ろうとして、市民3人が殺傷された事件を振り返り、「人種差別とファシズムに反対する労働組合や人権団体は全て結集せよ」と決議した。

     これには約100団体が呼応し、8月26日の集会に対抗デモを組織して中止に追い込んだ。オルト・ライトは市内の公園に会場を移そうとも試みたが、港湾や、サービス業労働者、教員、市職員らに阻まれ、断念。翌日は別の極右勢力が東部のバークレーへ結集しようとしたが、5千人の抗議を受け頓挫した。

     カリフォルニア大学バークレー校では今年2月、極右メディア「ブライトバード」のヤノプルス編集幹部が共和党系学生団体の招待で講演を予定していた。激しい抗議の末、中止になったものの、今月末に再び招かれており、事態の緊迫が予想される。(ジャーナリスト・丘野進)